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Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

10月28日◇ジョグジャ・ミューラル・フォーラム

 久しぶりにJNM(Jogja National Museum)で大きな展覧会があるというのでオープニングに出席した。まだ開館して間もない美術館であるが、私にとってJNMは親しみのあるミュージアムだ。というのも、今年4月に日本から大勢の日本人アーティストがやってきて、『KITA!!! –Japanese Artists Meet Indonesia-』なる展覧会が国際交流基金主催で開かれ、私は現地コーディネートを仰せつかったからだ。準備期間から開催期間、撤去までの約2ヶ月ここのスタッフと共に過ごしてきてから、ここに住み着いてる犬たちともなんだか親類気分なのだ。
 
 今日の展覧会は元APOTIK KOMIKのメンバーの一人、Samuel Indratmaが主宰するジョグジャ・ミューラル・フォーラムのここ1年間のプロジェクトを見せるもの。サムエルとはジョグジャに来てすぐに知り合い、「公の場所にアートを!」という彼の企画に賛同して、私も過去ジョグジャの目抜き通りマリオボロの一角に15メートルのミューラル(壁画)を制作したことがあった。

 思えば彼もこのミューラルプロジェクト、長いこと続けている。「継続は力なり」だとするならばたいしたもんだ。実際、ジョグジャの街にはどこもかしこもミューラルで埋まっている。市民全員がアーティストって感じ。


10月28日◇ジョグジャ・ミューラル・フォーラム_b0090333_12203716.jpg で実際にここ1年間彼がやってきたのは、以前のようにジョグジャの若手アーティストを誘って、このエリアは誰々さん、ここは誰々・・・という作品スタイルではなく、ジョグジャのカンプン(田舎)に入り、カンプンの人たちを巻き込んで作っていくミューラルのプロジェクト。非常に機能的なサインもたくさんあって、
「ここが町内会長XXXさん宅 ⇒裏はXX父ちゃんの揚げ物屋」
「夜はバイクのエンジンを止めて通りましょう」
「たくさん読んで賢くなろう」
などなどが文字とともにイラスト付で制作されている。


10月28日◇ジョグジャ・ミューラル・フォーラム_b0090333_12213218.jpg さらに面白いことにジョグジャの伝統美術の分野からも作家を誘い、ワヤン(影絵芝居の影絵)作家やガラス絵描きなどもミューラル作りに参加している。彼らはすでに70歳を越えるような人たちだけれど、まだまだ元気に脚立を乗り降りして、大きな壁画を完成させている。
 

10月28日◇ジョグジャ・ミューラル・フォーラム_b0090333_1222195.jpg 実際には田舎の社会で機能するミューラルなので、展覧会場にはそれぞれのエリアにどんなものがあるかを撮影し、その写真の展示が多いのだが、それでも実際に使われているものもかなり持ち込まれていた。半年前にはここに淀川テクニック、しりあがり寿、SONTONなどの作品が展示されていたんだな~と、私は特別な感慨もあったり。


10月28日◇ジョグジャ・ミューラル・フォーラム_b0090333_12223418.jpg 個人的におもしろかったのはベチャ(ジョグジャの人力車)の車輪カバーの絵の展示。そういえば昔福岡のアジア美術館でも「リキシャ展」ってインドかどこかの三輪タクシーの絵の展覧会があったように記憶している。私はこういうヘタウマものが好きだ。


10月28日◇ジョグジャ・ミューラル・フォーラム_b0090333_1223339.jpg 今回の展覧会は言い方をかえれば「素人さんたちの展覧会」っぽい部分もあり、オープニングに来てる人のほとんどがそのまんまカンプン(田舎)のオッチャンたちだった。でもこういう人たちが普段まったく関わりのない公立美術館で自分たちの作ってものを見せるってのも、美術館の一つの役割ではあるのかもしれない。

 さすが(イイ意味で)カンプンの展覧会だけあり、オープニングのパフォーマンスはダンドゥット!これはインドネシアの大衆音楽で、セクシー姉ちゃんが腰ふりふり兄ちゃんを挑発して歌い踊るもの。なんでこれがイスラム大国インドネシアで許されているのかがよくわからんのだが、ともかくすでに赤いミニスカート姉ちゃんの踊りと歌声に、ミューラルを制作した田舎の父ちゃんや若者たちはすっかり酔いしれ、オープニングの夜は更けて行くのだった。
by midoriart | 2008-10-28 23:19 | Yogyakarta