Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

12月12日◇総合学習の朝

 今日びの学校教育には「総合教育」なる枠があるらしい。私が通ったK女子中学では今、3年生に向けて「総合的な学習の時間」というのがあって、たまに外部から講師を呼ぶという。なぜか今回の私の帰国を知っていたかのように、さらに個展が始まって落ち着いた時期というタイミングで、この外部講師の依頼があった。
 ミッションスクールK中学の今年度の主題は「平和を実現する」、3学期のテーマは「平和を創る人になりたい」で、平和を実現している人について調べ、その人の生き方を学ぶというもの。帰国して間もなく、この担当である先生から電話をもらった時には、失礼ながら笑いそうになった。あまりにも私の生き方が「平和の実現」とはかけ離れていたからだ。

 断るつもりで約30年ぶりの中学へ出向いたのが11月末。ところが昔世話になった先生がまだ数人いらっしゃって、
「卒業生に廣田のようなのがいるのは、今の子供たちにもいい刺激になると思うんだ・・・」
などと説得され、つい断れなかった。
 私の過去のヤンチャぶりを知っている別の先生などは
「そりゃ~廣田、お前自身は幸せな生き方してるよな~。ただ、周囲の人間はえらいめ(名古屋弁で「大変なめ」の意)にあっとるけどなぁ」
と、もっともな意見。


b0090333_17101053.jpg もしも中学生の子らが、私の過去の活動、それもジャワ地震の時の活動を聞いて、そこを知りたいといわれるなら、私は本気で断ろうと思っていた。だって、他の外部講師はといえば、1992年ルイジアナ州に留学し、ハロウィーンのパーティで仮装、会場を間違えて射殺された服部剛丈さんのお母様とか、NPO平和のためのメモリアルセンターに関わった女性弁護士とか、地域ボランティアで活動されているオバチャマ、名古屋のYWCA総幹事など。どうみても「たまたま成り行きでやっちゃった救援活動」の私がここに混じってるのはおかしい。

 ところが担当の先生は、私がこの学校を離れて芸大を選び、海外へ渡って制作活動している、さらに今愛知県美術館で展示しているような、他者とのコミュニケーションから何かを作り出すという姿勢を、生徒に話して欲しいとおっしゃるのだ。
 私が中学時代にお世話になった先生が一人も残っていなかったら、本気で断っていただろう。今まだ中学に残ってる先生方への、過去の罪滅ぼしとして今回は引き受けたという感じになってしまった。


b0090333_17102280.jpg そして今日、講義は1時間目。久しぶりに6時起きして中学へ向かった。1時間目は8時45分から始まる。過去に一番私がお世話になった(正確には迷惑かけっぱなしだったと言うべきか)S先生が、私の講義を一番後ろの席でずっと見守っててくれたのが心強かった。
普通私の年齢だったら、このくらいの子供がいてもいいわけなんだけど、残念ながら私の周りにはこのくらいの世代ってのがまったくいないから、どんなふうにコミュニケーションとったらいいのかわからず最初はひるんだ。

 でも中学の授業はたったの45分、あっという間に終わってしまうからひるんでる暇はない。私の中学時代から芸大受験、バリでの暮らしの始まり、ヒンドゥー教やイスラム教との出会い、自分の作品つくりとテーマ。そして2005年に訪れたフィリピンで知った第二次世界大戦中の歴史、そこから始まった「交換プロジェクト」のことをざーーーっと話した。
 

b0090333_17103386.jpg 最後の5分で質問をうけるつもりが、誰一人質問をしない。今の子はこういうものなのか、私の話がおもしろくなかったのか、私の態度が15歳の子供たちを威嚇していたのか、どうも原因がわからない。
 教室を一緒に出たS先生が
「わしはいろいろ勉強になったぞ。生徒も真剣に聞いとったしなぁ~」
と感想をくれた。モノを作っているときでもそうだけど、全員に理解してもらうなんてことは不可能に近いわけで、一人でもいいから、心まで届くような、響くようなメッセージが送れていたらいいなぁ・・・と思う。

 今回やって思ったけど、自分のために、とてもいい経験になった。過去に何度か講演なるものはしたことがあるけど、今回の相手は一番若くて一番未知の世代だったから少々緊張した。彼女たちがどんなレポートを書くのか、怖いけれど気になるなぁ~。
by midoriart | 2007-12-12 22:09 | Japan