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Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

4月12日◆家はオチンチンの山

 愛知県犬山市に野外民族博物館リトルワールドがある。私は芸大時代に学芸員の資格を取ったのだけれど、そのときに必須だった「博物館実習」の単位はここリトルワールドで取った。バリにいる頃からだからかれこれ10年近くなるだろうか、リトルワールドの野外展示の一つ「バリ島貴族の家」のコーディネートの仕事を1年に一度させてもらっている。 
 バリ島の家屋はヒンドゥー教の儀礼があると、金色の装飾模様をあしらった飾り布で飾る。リトルワールドでは一年中野外展示なので、日差しや雨風ですぐに布が傷む。だから私が1年に一度バリの工房で新しいものを発注して日本へ送っているのだ。毎年夏休みの取替えの時期に合わせて飾り布をオーダーしている。今回はその発注時期に合わせてバリに来たのだった。

 私の家族がいるUBUDから工房のあるデンパサールまではバイクで約45分。今日はマデ兄貴に乗せてもらって朝一番で出かけた。日中では暑くてたまらない。毎年のことなのでオーダーはスムーズ。布の色合わせや、モチーフになるヒンドゥーの神さんを去年とは違うものに変更し、仕事を済ませてすぐに帰宅。

4月12日◆家はオチンチンの山_b0090333_1155972.jpg 今日は娘エリパニ(正確にはマデサナ兄貴の娘だけれど、幼稚園の時からずっと一緒に暮らしてたようなものなので、我が娘くらいかわいい)の誕生日なのだ。といっても西暦の誕生日ではない。
  バリでは210日で1年になるサカ暦というものを使っている。寺院祭やついこの前あったバリ・ヒンドゥーの新年ニュピはこのサカ暦で数えるから210日毎に記念日がやってくることになる。これで年齢まで計算されたら、私なんかもう60歳くらいになっちゃってるかもしれない。
(今月末には初出産予定の私の娘エリパニがニッコリ笑ってケーキをもつ図)


エリパニのリクエストで誕生日祝いはケーキにした。せっかくなら街に出たついでにちょっと美味しいケーキを買ってやろうと、仕事の帰りにスポンジ・ケーキとブラウニーを購入。家に戻ってから近所のスーパーでアイスクリームを買い、トッピング。こっちの誕生ケーキはクリームがまずいし、見るからに食紅使ってて気持ち悪い。そんなんよりはアイスをのせたほうがずっと美味しい。

4月12日◆家はオチンチンの山_b0090333_1171843.jpg 最初にこのケーキを口にしたのはわがバリ人家族の家長である父ちゃん。歯の抜けた父ちゃんでもアイス付きケーキは食べられる。美味い~と喜ぶ図。


そうそう、我が家というのは日本から比べたら大家族で、この歯のない父ちゃんを家長として、同じ敷地内に長男夫婦とその長男(23歳)、次男夫婦(これがマデ兄貴)とその長男(ヨーヨーの上手いフォギーは中学1年生。今日誕生日のエリパニはここの夫婦の長女だけど去年の10月に嫁いだ)、三男夫婦とその長男(5歳)、そして四男夫婦とその娘二人(4歳と1歳)。計13人が一緒に暮らしている。


4月12日◆家はオチンチンの山_b0090333_1182951.jpg 私はこの家に戻ったら次男であるマデ夫婦の家のエリパニの部屋を使うのだけれど、ちっちゃな子供たちは私がいるとアイスクリームを買ってもらえるので、
「日本のママが来た~!!!」
と盛り上がって私の部屋までやってくる。もちろん、今日のエリパニの誕生ケーキだって、みんながしっかり分け前をGET。


 ところで。
 今このマデ兄貴の家は、オチンチンが山になっている。我が家では次男と三男が木彫り師。マデ兄貴は人がよすぎてあまり商売上手とはいえないけれど、嫁さんのムプがとっても商売上手で、家計も切り盛りしている。今回木彫りのオチンチンに栓抜きのついたもの3000個のオーダーが入ったために、家族中でオチンチン・ビジネスに忙しい。


4月12日◆家はオチンチンの山_b0090333_1193124.jpg 父ちゃんが彫ったオチンチンに栓抜きを挿すための穴をドリルで開け、


4月12日◆家はオチンチンの山_b0090333_120810.jpg 嫁のムプが栓抜きを差しこみ、その穴をおがくずで埋め、
 それを娘のエリパニが磨き、数を数えて100個ずつ袋につめる。



4月12日◆家はオチンチンの山_b0090333_1235339.jpg  これが栓抜きをつける前のオチンチン。そしてオチンチンにはなぜかクライアントの要望で、チョコレート色のワックスを塗ったものと、木の白地をそのまま生かして透明のワックスを塗ったもの。そしてオチンチンのみのものと、玉付きのものとがある。


 ここまで大量にオチンチンが山積みされていると、その景色はなんとも壮観。
 にしても、こんなオチンチン栓抜きを3000個も注文する人の気持ちが知れん。だいたいデザイン的にも、立てて置くことができないので、寝させておくことになる。洒落でもつには今ひとつパンチが足りないし、かといって真面目にもってもらってもちょっと困るシロモノ。いったいどんな国へ送られ、どんな人が使うのだろうか・・・と想像しているとキリがない。

 さっき挙げた本当の家族メンバーに加え、この家には何人かの遠い親戚が便乗して暮らしていたりする。中の一人は田舎から出てきてUBUDの中学校にいってる女の子なんだけど、こんな年端もいかない娘が、オチンチンを握って一生懸命ブラシで磨いている姿を見ると、なんとも奇妙。彼女にとってこのオチンチンはいったいなんなんだろう?彼女はいったい、何を思って今日もこのオチンチンを磨いているのだろう?と一人でいろいろ考えてしまう。

 N翁とのDEEPな旅行でマデ兄貴を二日間も使ってしまったので、ムプはまだオチンチン3000個達成できずに今日も忙しかった。私も責任を感じて、夜からはオチンチン・ビジネスのお手伝いにいそしんだ。
by midoriart | 2007-04-12 21:13 | Bali