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Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

ボランティア考

 今日は東が先生の日だったので、学校で教鞭をとった後にうちに寄ってくれた。こどもテント・プロジェクトのロケーション探しの問題だ。ブラムを通じて知り合った子供好き有志の大学生グループが今、被災地の子供を集めて幼稚園の代わりをしている。彼らは自分たちで調査して決めた数箇所の被災地へ出向き、一箇所で3日間泊まりこみ、子供たちの遊び相手になっている。3日ごとに場所を移していくという移動幼稚園のようなことをしている。彼らの代表を東グループの詰所に招き、話を聞いたのは6月12日のことだった。我々が物資デリバリーをいったん切り上げ、新たに長期戦の救援活動について相談していたときから、私は今後子供にフォーカスした救援をしていく意向を仲間に知らせていた。そして東グループも私の考えに賛成してくれた。そこで「こどもテント・プロジェクト」が始まったわけだ。
  ただ、我々がそうした子供のための場を提供しても、内容が伴わなければ意味がない。単に空間を与えて「ハイ、じゃさよなら」では困る。そんなときに、ブラムが見つけてきたのが彼らだった。我々はすぐできることとして、彼らの活動を支援すべく活動中の子供たちの食事をサポートすると約束した。子供たちへの食事のデリバリーはすでに2日前から始まっている。
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  ところが・・・。
  昨日の夕方、東グループが現場を訪れた際に、彼らボランティアがこう話した。
「このままでは私たち、とても続けられそうにありません。最初の話ではボランティアにも交通費とタバコ代が出るって話だったので引き受けたんですが、今までになんのサポートもないし・・・」
  ミーティングのたびに思うけれど、東は若い顔して(かなり若いんだと思っていたけれど、実はそうでもないらしい。ブラムが教えてくれたけど、彼らは同い年だったのだ。だから31歳。かなり童顔じゃないか?東?)なかなか冷静な判断をする。彼は自分たちのグループでは、子供たちについて毎日彼らを遊んでやるだけのスタッフがいない。また子供を相手にするにはそれなりに適した人を選ぶ必要もある。それを無理に自分たちでやるくらいなら、保母さんや保父さんを目指しているような学生を探してきて、我々はあくまでも器(テント)と食事サポートに徹するのがいいというのだ。コイツ、やっぱりボランティア経験長いなー、大事なところをちゃんと見てるし、慌てないし、状況判断もちゃんとできている。ジャカルタのSさん、ホントにいい人紹介してくれたわ。


ボランティア考_b0090333_8455068.jpg 「で、どうよ?彼ら。やっぱり難しいかしらね、続けていくの・・・」
と聞く私。
「うん。スタミナがないよ。今の時点でもうバテてるんだからね。せっかくいいプログラム作っているのに、ボランティアの姿勢があぁではね・・・」
 つまり、最初からアルバイト感覚で手伝おうとしている学生たちだったのだ。金銭的サポートがなければ続けられませんという。彼らはもともと同じ大学ってわけでもなく、趣味で集まってできたようなグループで、東たちのように昔からボランティア活動を経験していてグループ内の役割もはっきりしているってものとは随分違ったようだ。キバり過ぎちゃって、長距離用にスタミナとっておけなかったのね・・・。それとも長期戦になることも読めずに、一時だけのヒーローになりたかったのか。

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  いやー・・・・。
  ちょっと前に被災地のオッチャンたちを見てて、被災者ぶって救援に甘えて何もしない人と、政府に頼らず自分でどんどん復興に向けて前向きに動いている人と、どんどん差が出てくるだろうと思ったけれど、ボランティアにだってそれはいえる。被災後すぐにはいろんな人が物資救援をしていた。経済的に余裕のある人が、こぞってスーパーマーケットに殺到し、誰も彼もがインスタントラーメンを買いあさっていた。たくさんモノ買って、困ってる人に配るという自分自身の行為に酔ってるような人たち。私とブラムが同じように多くの物資を買い物カゴに積んでいるのを見て、
「あんたたちはどこに配りに行くの?私はもう△△のもーっと向こうの奥の奥まで行ってきたし、昨日は◇◇まで行ったし、今日は今から○○にまで行くのよ。もー疲れちゃってねー。大変」
ってさー、あんたは誰のためにそれしてるんだ?
大地震。こういう時には誰もが英雄になれる。人助けしているっていう自分がカッコイイって思ってる人も実際たくさん見た。そういう人たちを見て、自分はけしてそうなるまいと思ったもんだ。人に何してると聞かれたら
「日本の友達からの預かり物を買ってる」
と答えた。私がやってるんじゃない。今も日本の皆さんの愛の代行だという気持ちを忘れないようにしている。


ボランティア考_b0090333_84707.jpg  で、被災から半月たった今を見たらよくわかるわ。こういう一時的英雄希望者はもうスーパーにはほとんどいない。彼らは数日自分のお金を「善意」のために使い、被災地の救援物資配給の不均等さなど無視してひたすら物資をばら撒くことで満足していった。あとこういう時の救援を政治的に利用する人たちもいる。テントに会社や団体の名前入れてる暇あったらその前にまず被災者にさっさと配給してくれればいいじゃん、って思うこともよくある。だから私は、「こどもテント・プロジェクト」が始まっても、売名みたいなことはしたくないなーと思っている。売名っても、我々の救援パック・プロジェクトには名前がないからいいんだけど、ここをどうしたもんかなーと思案中。
  私個人の考えとしては、救援プロジェクトに参加してくださった皆さんもそうだと思うけど、「義援金が本当に困った人へ、本来の目的どおりに届く」ことが重要であって、我々が誰なのかを被災者に知らしめる必要はないと思っている。けど、もしかすると、「こんなジョグジャの田舎で起こった地震に対して、たくさんの日本の人々が心配して義援金を送ってくれているんだ」ってことを彼らに伝えることが、少しでも彼らを元気づけることになるかもしれない、とも思うのだ。だから今までデリバリーしてるときには、
「これはジョグジャの皆さんのことを心配している日本の友人たちからです」
って言って渡していた。そうするとやっぱり喜ぶもの。
  ってことで、テントに名前を入れるかどうかなんて些細なことではあるけれど、東に聞かれたりもしたので、そのへんのこともどうするか、ちょっと考えないとな・・・。 
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  今日は写真で報告することがあまりなかったな(なので内容とは関係ないけど激災地の一つクラテンの最近の様子を散りばめてみた)。そうそう、夜に東から吉報!バテた学生グループなしで東グループだけでも進めていける「こどもテント・プロジェクト」のロケーション決定!さっそく西ジャワのバンドンからテント注文をした。テントは今週末にジョグジャに届くので、現場をプロジェクトに向けて調整していけることになった。私も早速ロケーションのチェックに出向こうと思う。
 
 で、お決まりの新メンバー発表なんだけれど、まずは、ちょっと遅れての発表でゴメンなさい、ルピアで義援金を送ってくださった方がお二人いらっしゃいました。野田敏勝さん(外務省領事局海外邦人安全課援護班)、そして熊谷(国際交流基金ジャカルタ)。どうもありがとうございました。
 そして日本の口座に振り込んでくださった新メンバーのみなさんは
高地由記さん、清井陽子さん、大友恵理さん(AAN:Art Autonomy Network)、木村 智美さん(国際交流基金文化事業部文化企画課)、古田久恵さん、ナカザワ ユミコさん、坂田 佳子さん
以上、ルピアでの参加も合わせて計9名、合計94,000円の追加。
 こどもテントが動き出すとまた義捐金も大きく動き出す。そのうち第2回の中間会計報告もいたします。
by midoriart | 2006-06-15 23:41 | Jawa Earthquake