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Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

ジョグジャ地震救援パック:参加のお誘い

 朝から被災地を回り、夜はジョグジャ日本人会の会合に出席していたので、帰宅は午後11時を回っていた。今日は眠い。朝の7時から国際電話、名古屋のFM放送局から突然の電話で、生放送でインタビューしたいという。最近の若い者は口の聞き方も知らんヤツが多くて、今朝の電話の娘もそうだった。さらにこっちは毎夜余震にビビらされて気持ちよく寝られたことがないってのに、朝から起こすなっての。自分がどこの放送局の誰で、何が用で電話してきたのかすらもちゃんと説明できない。半キレの私の対応に恐れをなした娘は別の担当者とかわった。今度は結構丁寧。話を聞けば朝の生放送で現地の様子を話してほしいとのこと。
 いまこうして毎日ブログを更新しているのも、数少ない現地の日本人として、一般の報道では伝わらない部分までを知って欲しいという気持ちから。ラジオでこちらのことを説明するというのは、私の使命だ!くらいに思っているので、寝ぼけながらも引き受けた。それにしても。被災地にくる報道陣よ、被災地の日本人に電話してくる日本のメディアよ、もっと愛をもって動こうよ、高飛車はいけない。

 ところで話は昨晩にさかのぼる。電話は国際電話、以前ジョグジャで美大生をしていた日本人女性Mさんが、私の安否を気遣って連絡してくれたのだった。彼女は私に言う。
「私にとってはジョグジャは知らない町ではありません。今、知人の何人かが困っているのに、日本から何もしてあげることができません。どうしたらいいのでしょう」
「そうですねー。日本の信用できる団体がやってる義援金とかどうなのかな?」
「いや、みどりさん、私もインドネシアのことはわかりますけど、そういうところを通して送ったお金は、なかなか本当に困っている人の手まで届いていないじゃないですか・・・」
 インドネシアに限ったことではないかもしれないが、ここではそれ当たり前。ずっと前の米不足で日本が米を救援物資で送った時だって、腹すかせたことすらない官僚たちが古米を自分たちの親類で分けて食っちゃったってことがあった。さらにしばらくたってからは街のスーパーで「日本米」として売られてもいた。一体、海外からの救援物資にどうして値がつくの?店で売られるの?インドネシアはそういう国だ。だから彼女も、どうしたらジョグジャの被災者のためになることができるのか、きっと日本でイライラしながら考えているのだろう。
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「もしも。もしもですよ、ミドリさんが大変じゃなかったら…」
あ、何かお願い事されるな・・・
「日本の口座に私が振り込んだお金をそちらで出してもらって、それで物資に換えて被災地へ届けていただくことって・・・可能でしょうか・・・」
さすがに面倒極まりないお願いなので、彼女もかなり気が引ける様子。

 確かにそれってかなり面倒くさい。でも、ジョグジャに縁のあった彼女が今、何かをしないではいられないって気持ちもよくわかる。地震発生以降、この私の安否を気遣って連絡くださった方は80名余。彼らのほとんどが
「わたしに何ができることがあったら、いつでもお知らせください」
と言葉をかけてくださっている。誰だって、何かできることがないか考えてくれている。
 私は彼女の半泣き状態の声と、その想いに動かされ、結局日本の銀行口座番号を伝えていた。タイミングよくその後に実家の母から電話があったので、事の流れを話すと
「よし。私も乗せて!一緒に物資買ってよ、私もお金送るから」
と言う。わかりましたよ、あなた方の気持ちは私が預かります。そして確実に困っている人に届けます。
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 昨晩の電話から、こんな展開になったのだった。早速今朝は被災地巡り。震源地に近く、交通の便が悪い地域へインドネシア人の友人と入って行き、現段階の救援物資の配給状況をたずねて歩いた。最大の被災地バントゥルの救援隊集合場所にはすでにたくさんの軍用機、トラックが集まり、救援物資を届けるため動いているけれど、実際にはなかなか末端まで品が届いていないのが今の状況。
 被災がひどく、交通路がふさがれているならまだわかるけれど、町内会長まで物資が渡っているにも関わらず、会長が自分の親類縁者をエコひいきして、血縁でない家族には何も分け与えていないという例が、今日私が聞いただけでも何町内もあった。赤ちゃんがいるのに、地震のショックで母親はお乳が出ない。だから粉ミルクはどうしてもほしい。国の救援物資には粉ミルクも含まれているのに、私の知人の家族にはミルク一缶さえ配給されていなかった。誰にも届いていないからわかるけれど、町内会長の勝手で、まったく何も受け取れないってのは許しがたい。
 日本の友人、母から預かった大事な義援金をいかに有効に使うか、今日はそれだけを考えて動いた。まったく救援物資の届いていない地域というのは、地震二日目に車で行ってみたが、途中で軍隊に止められた。こちらには私のような一民間人が入ることはできない。どこまで公平な立場で物資を運べるかはわからないけれど、最低の条件として「本当に救助の必要な人たちに、物資を届ける」こと。
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 今日一日被災地を町内単位で訪問し、足りないという物資を聞いてみた。町内の被災状況、町内としてのまとまりがあるかないか(向こう三軒両隣が機能しているか)、一町内の家族数が多いか少ないかによっても、必要としている物資はそれぞれに違うけれど、リストにすると、
1)米(またはインスタント麺)
2)テント(仮住まいとしての)
3)毛布(毎晩かなり冷え込む)
4)灯油(料理のため、ランプのため)
5)生理用品
これらは緊急に必要なものとして、どこの町内でも挙がった物資だ。まずはこれらを必要な人に届けたい…。

 人様から預かる大切な義援金なので、これをすぐ有効的に使おうと思うと私だけでは動けないので、ここ数日被災地巡りを一緒にしている友人と、まさに最悪な被災地に住みながら難を免れた一人が一緒に動いてくれることになった。非常に小さな小さな活動だけれど、確実に困っている人へ、できるだけ速く届けることを第一目的にしたい。
 今日被災地を回りながら聞いていたラジオで
「今朝、バントゥルで少女が亡くなりました。死因は寒さと飢えのため」
と流れた。赤道直下のこの島で、少女が寒さで命を失う状況が今ここにある・・・。
 これを聞いたとき、私たちの活動はたとえ小さくとも、今日動くことで一人の少女の生命を救うことができるかもしれないと思った。小さいことでも必ず意味がある。誰に物資を配るか迷っているくらいなら、とにかく目の前の人に一枚の毛布を渡す。それが今、一番大事なこと。
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 我々の活動は小さい。町内単位で物資を運ぶ。
 物資の内容と量を三人で相談し、1町内で80万ルピア(約1万円)という救援パックを作ることにした。つまり、私のブログを読んだ方、どこに義援金を送るのが有効で確実なのか悩んでいる方がいて、この私を信用してくださるならば、私が受け入れ先になる。1万円になった時点で救援パック一式を購入してすぐに被災地の町内へ運ぶ、という方法だ。
 私は過去にボランティアをしたこともない。こうした状況下でどうした方法で動くのが最善なのかも知らない。けれど地震発生から今まで毎日現地にいて、「今やらなけらば間に合わなくなること」が多いのがよくわかる。だから今動きたい。今晩毛布を着て寝られる子供が一人でも増えれば、我々のやったことには必ず意味がある。
 明日はまず、第一弾で2パック分を購入、今日調べてきた町内に物資を運ぶ。運んだ先ではどいつが悪代官ならぬ悪町内会長かわからないので、本当に物資のない人に手渡しする。もちろん、この方法がベストではないかもしれない。でも今は方法を机上で考えている時間はない。まず動きたい。
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 このブログを見た方で、この活動に興味をもたれた方は、ぜひ参加してほしい。何も一人に1パック分寄付して欲しいというのではない。Aさんから1000円、Bさんから2000円、そしてそれが1万円になったとき、一つの町内に1パックの物資を送れる。そういう形でしばらく続けていこうと思う。義援金の状況はもちろんこのブログで随時報告し、救援1パックがどの町内に運ばれたのかなどもすべて写真と一緒にこの中で報告していく。
 おっと、この1パックの内容をまだお知らせしていなかった。1万円があれば、
1)テント(トラックの荷にかぶせる青いビニールシート 4x6m 2枚)
2)マットレス(キャンプ用の薄いスポンジ 20m)
3)米 10キロ
4)毛布(10枚)
5)ビタミン薬(60粒)
6)缶詰(いわし、コーンビーフなど 数缶)
7)生理用品
という1パックができるのだ。今後の長いテント生活を考えたら、これだけでも足りないことはわかる。けれど私たちはまず今必要なものを、救助されるべきなのに救援の手の延びていない人に届けたいと思う。


参加してくださった方には、このブログ上でどこに物資が届けられたかまでを正確に報告します。

 ってことで、なんか大変な活動始めてしまったんだけど、もう引けないしなー。
 までも、こんなときくらい、少しは人の役にたっておこうかな。
 明日は10時から物資調達。午後には困ってる人に米も届けられるだろう。
by midoriart | 2006-05-30 23:57 | Jawa Earthquake