Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

2月11日◇ティルムのNgayut儀礼

 今朝午前6時から起きたのは、マデ兄貴、嫁のムプ、昨日からバリに来て撮影を始めている私の友達、フィリピンの映画作家のキドラット。今回私がバリに来た一番の目的、ティルムの浄化儀礼のためにみんなで海へ行くことになっている。


b0090333_22113426.jpg ティルムは1997年7月の新月に生まれた。バリ語で新月はTilem(ティルム)、新月の様子のとおり、真っ黒な身体の凛々しいオス犬は、私がジョグジャに引っ越すときにもちゃんと着いてきてくれた。私がこの国で、一人で暮らしてこられたのは、ひとえに彼がいつも私をガードしてくれたからだった。そんな彼が逝ったのは昨年3月だった。
 ジョグジャの庭に埋めてあったティルムをそのまま残していくことだけが気になっていた私は、少し前にバリから荷物を運ぶために来てくれたマデ兄貴とその息子フォギに頼んで、一緒にティルムの霊を呼び起こす儀礼につきあってもらった。


b0090333_2215872.jpg そして、こうしてボトルにつめたティルムの墓の土を、今回私がバリへ一緒に連れて帰ってきたのだ。


b0090333_221619.jpg 1990年に初めてバリを訪ねて以来、あっという間に20年の付き合いになったインドネシア。ここに暮らす間に、私はティルム以外にも2匹の相棒を亡くしている。初代スギト(カニクイ猿)と、現在のスギトの夫ソチョだ。
(写真は去年3月、ティルムの後を追うように1週間遅れで逝ったオス猿のソチョ)


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 この2匹の猿は、バリの兄貴の家の庭に埋めてある。今回は彼らの霊をすべて海に返すことにしていたので、マデ兄貴の嫁ムプと一緒に猿たちを埋めたあたりの土を掘り起こして採取した。ムプがちゃんとマントラ(お経)を唱えてくれる。
「スギト~、ソチョ~、起きなさいよ~、さぁ海に行くよ~~~」
 そしてジョグジャから連れて帰ったティルムの土と一緒にして白い布でくるみ、壷に収めた。


b0090333_22215170.jpg 猿2匹と犬1匹なので、3つの供え物がいる。私はここで彼らの浄化儀礼についてフツーに書いているけれど、本来ペットとか愛玩動物なんて意識のないバリ人にとって、動物ごときに人間のような儀礼をするなんてことはナンセンス。ムプがこの浄化儀礼のための供え物を作っていたときも、近所の人が見て、
「え?ここんちで誰の儀礼があるの?」
「あーこれね、ミドリの犬と猿のよ・・・」
と答えて唖然としていた。
 でも私が20年近く世話になっているマデ兄貴の家族は、長年私と暮らして、いかに日本人(の多く)が自分の飼っていた動物に対して愛情をもっているかを理解してくれている。だからこんな面倒な供え物でも、ちゃんと人間のように真心込めて準備してくれるのだ。こんなバリ人はめったにいるもんじゃない。


b0090333_22262473.jpg 聖水をかけ、マントラ(お経)を済ませた後、我々も砂浜に座り、海に向ってティルムたちの霊がここに解き放たれ自由になることを祈る。マデ兄貴は
「俺はティルムが日本までついていって、ずっとミドリを守ってくれるように祈ったぞ」
なんて言ってくれる。本当にあったかい家族なんだなー、私のバリの家族は。泣けてくる。

 そして3匹の霊のこもった土を入れた壷を、マデ兄貴が海に流してくれた。私では遠くまで行けないので、兄貴がザブザブ波打ち際を進んで、遠くへ投げてくれた。3匹の魂を乗せた壷は、あっというまに白い波間に消えていった。これからはどこにいてもこの3匹が見守っていてくれる。合掌・・・
by midoriart | 2010-02-11 22:07 | Bali