Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

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 2月最後の日曜日、ずっと気になっていた岡崎市美術博物館の『芹沢銈介展』を見に行ってきた。この日を選んだのには訳がある。展覧会に合わせ、濱田琢司氏の「民藝の思想と個人作家-蒐集と創造-」という講演があったからだ。民藝好きの芸大時代の先輩と同期を誘って名古屋から小一時間のプチドライブ。

b0090333_22463998.jpg 別名「マインドスケープミュージアム」と呼ばれる岡崎市美術博物館は岡崎の中心からはちょっと離れた広大な公園内にある。車じゃないとかなり行きづらい場所だ。この奥に見えてるガラスの建物がそう。

b0090333_22265733.jpg 駐車場から歩いていくと、1995年栗生明によって設計された美術博物館が見えてくる。ガラス張のこの感じ、入ったらすぐに地下階へ向かうエスカレーターがある感じ、私は大阪の国立国際美術館を思い出す。
 そしてまずは入場券を買い、13時からの講演会入場整理券のために並ぶ。こういうものに並ぶという行為が、なんだかコンサートを待ってるような感じに近くて、私は一人わくわく感が抑えられない。芹沢銈介の展覧会で、民藝についての講演なので、待ってる人は言っちゃ悪いが私より上の世代の方ばかり。でもこんなにたくさんの人が講演会とかに興味があって、わざわざ整理券のために並ぶんだな~と、少し驚いた。


b0090333_22304810.jpg 整理券を無事にGETし、講演前にまずは腹ごしらえ。ここのレストランは景色がよくて気持ちがいい。しっかり食べて定員70名のセミナールームへ。濱田琢司氏の今日の講演は民藝のおこった時代のこと、その思想から蒐集についてまでのおおまかな話。民藝運動の中心人物ともいえる濱田庄司(左)、柳宗悦(中央)、河井寛次郎(右)らの写真なんかも出てきた。講聴者の中には、よもや今日の講演者があの益子の人間国宝、濱田庄司の孫とは知らずに参加した人もいたようで、学芸員からそんな説明があったら、「お~~~~・・・」と低く小さなどよめきが起こっていた。


b0090333_22562914.jpg 講演が終わってからようやく展覧会を見る。今回の展示品はなんと個人コレクション!染色家宗廣陽助氏が中年かけて蒐集した芹沢の作品はよく見られる作品以外にガラス絵や板絵などもあったりして、その数と種類には驚かされた。私がとくに好きだったのはガラス絵群。

b0090333_22373870.jpg 芹沢が強く影響を受けた沖縄を感じる作品も多々あった。


b0090333_22382231.jpg 棟方志功のときも、河井寛次郎のときもそうだったけれど、彼らの作品を展覧会で見ると、作品そのものよりも、彼らの生き方が強く前面に見えてきて、その真摯さに打たれる。地道な作業の繰り返しの中で、常に一つを追究していった姿勢に頭が下がる思いがする。
 今回も、素材と丁寧に真面目に向き合うことの大切さや、人として日々感謝する気持ちとか、そんなものを静かなトーンで教わったような、そんな展覧会だった。こんなに近いとは思わなかった岡崎市美術博物館。これからはもっとちょくちょく来てみよっと。
by midoriart | 2012-02-26 22:20 | Art

寒空のパフォーマンス

 まだまだ寒波の留まる2月の週末、久しぶりに岐阜まで足を伸ばした。一番の目的は岐阜県美術館で開催中の『円空大賞』展で今日行われる田中泯のパフォーマンス「場おどり」を見るため。第6回の今回、円空賞を受賞した田中泯は、展覧会会期中に岐阜県の数箇所で「場おどり」を見せる。


b0090333_1152297.jpg 名古屋の知人を誘ったところ、うまい具合に彼女には大垣で用事があったので、ちょっとしたプチドライブとなった。昼間はまぁまぁ日差しもあり、車に乗ってる分にはそれなりのドライブ日和。大垣市に入り、彼女が寄ったのは、枡屋さん。


b0090333_11524796.jpg 今回知ったのだが、日本中の枡のシェアの90%以上はここ大垣にある5つの枡屋さんでまかなわれているらしい。店内にはすでに檜のいい香りが漂っている。知人はここで自分の焼型まで持っていて、教え子のプレゼントには自分の研究室のロゴ入り枡を作ってやり、卒業式にそれに酒を注いで祝ってあげるそうだ。なんとも洒落たお祝い。


b0090333_11525720.jpg たしかに、こんなふうに型をもっておいて、なにかの折にプレゼントしてもいいし、でかめの枡を作ってもらったら、小物入れにして積んでおいてもお洒落だ。プラスティックの計量カップで米計らずに、これ使ってもいいなぁ・・・


b0090333_11531393.jpg 次に寄ったのはこちらも古そうなせんべい屋。ここは創業安政6年の田中屋せんべい総本家。ちゃんと店内に職人さんがいて、おせんべいを焼いている。さっきは檜のいい香り、今度はおせんべいの焼けるいい香り。う~ん、日本ってなんて贅沢な文化をもってるんだろう。大垣ってなかなかおもしろいなぁ。
 知人は仕事でよく大垣に来ていたので、空いてる時間を見つけては大垣のおもしろそうな店などをチェックしたそうだ。ここのせんべいも散歩で見つけ、ファンになったというんだけれど、確かにどのせんべいも美味しい。つられて私もビンズせんべいと「利休」という抹茶味のせんべいを購入。

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b0090333_1153446.jpg そしてようやく一番の目的だった岐阜県美術館へ。時間はすでに3時を回り、日差しはなくなり寒々しい冬空に一転。まずは館内の展覧会を見て、ここで気合を入れて防寒具を足す。なんといっても、今日の「場おどり」は美術館の外に展示してある榎倉康二作品の前なのだ。美術館ロビーにはすでにサッカー観戦でもするのかといういでたちの人々が集まっている。きっと始まるギリギリまでは館内にいて、始まったら野外へ走っていこうとしているのだろう。
 そして始まった「場おどり」。久しぶりに見る田中泯。寒さの中で、より一層空気が緊張する。休みの家族連れもいて、彼のBUTOHを見て子供が叫ぶ。
「ママ~!見て見て!変なオジサン!!!」
しかしそんな言葉に笑えないほど、田中泯がつくりだす空間はピンとしていた。
(写真は昨年9月に刊行された田中泯初のエッセイ集『僕はずっと裸だった』より)

 正直、耳も鼻も凍りつき、明日のわが身はどうなることかと気になってしまい、どうして2月にこれなんだ・・・と少々主催者である美術館に愚痴でも言いたくなったけれど、見られて良かった。泯の「場おどり」はまだこれからも2月18日、3月3日、3月4日と岐阜県内で行われるので、興味のある方はこちらでチェック⇒「田中泯 場おどり」
by midoriart | 2012-02-15 19:57 | Art
 栃木県芳賀郡益子町には民藝運動を創始した陶芸家、濱田庄司の業績を伝える「益子参考館」がある。京都の河井寛次郎邸はまぁまぁアクセスも簡単だし、名古屋からは近いからいいけれど、益子はちと遠い。ずっと行きたいと思っていたところに、昨年濱庄の御令孫の一人濱田琢司氏と知り合い、火がついた。正月明けに東京へ行く用ができたので、これがチャンスとばかりに横浜の車持ち友達にお願いして連れてってもらうことに成功。


b0090333_2054594.jpg財団法人、益子参考館は濱庄が集めた陶磁器、漆器などの工芸品を展示・公開するために自邸の一部を使って1977年に開館。濱庄のセンス溢れる世界中からのコレクションが見られ、彼と陶芸の関係もひしひしと感じられる。はじめて訪れた益子の町はメインストリートにたくさんの陶器屋が並ぶ観光地だった。ちょっと瀬戸市が瀬戸物祭やってるときの感じと似ている。そんな観光観光したエリアからちょっとはずれたところに、参考館は静かに、堂々と建っていた。


b0090333_20563989.jpg3.11で被災したことは御令孫から聞いていたけれど、実際に行ってみてその大変さをひしと感じた。大谷石でできてる館はヒビがはいったり瓦が破損したりと痛々しい姿だった。そんな2、3号館は今も閉まったままになっており、彼の大皿作品などを見ることはできなかった。かなりの数の濱庄作品が被害にあったというから残念なことだ。(再建基金についてはこちら⇒「益子参考館震災再建基金」)


b0090333_20565674.jpg濱庄が使っていた登り窯も被災してレンガが崩れたままでまだ修復がされていなかった。


b0090333_20571622.jpg濱庄のろくろがそのまま残る仕事場。なぜだろうか、私はいつも、彫刻や絵画をやってる友達のスタジオを訪ねるときよりも、セラミックをやってる友達の仕事場を訪ねるときのほうがワクワクする。自然の素材をじかに触ってかたちをつくっていくという行為が一番原始的で人間的だからだろうか・・・。寒い朝一番の訪問客を白猫が迎えてくれた。
 「京都で道をみつけ、英国で始まり、沖縄で学び、益子で育った」という濱庄の生涯をしんとした彼の仕事場で想像してみる。


b0090333_20574616.jpgこの4号館は「上ん台」と呼ばれた母屋。濱庄が1942年隣町から移築したもので、たくさんの洒落た調度品を陳列している。中はカフェになっていてお茶が飲めると知ってたので、それが楽しみでさっそく炭焼きコーヒーをいただく。名古屋在住の御令孫がいれてくれる珈琲もとても美味しいのだけれど、ここの炭焼きも美味だった。


b0090333_20581581.jpg次に向かったのは益子陶芸美術館。ここでは1月29日まで「濱田庄司スタイル展」を開催している。実はこの展覧会、昨年末に東京の汐留ミュージアムで開催されたものの巡回。東京で見逃したので、今度は益子参考館とまとめて見る!と決めていた。1894年川崎で生まれ、東京高等工業学校で陶芸を学び、イギリスへ渡った濱庄のお洒落なコレクションが見られるおもしろい展覧会だった。陶芸作家としての顔だけでなく、モダニストとして自らがデザインを手がけた家具も展示されている。


b0090333_21131077.jpg この美術館の敷地には、旧濱田邸が移築保存されている。江戸時代後期の建築で、町の指定文化財にもなっている。濱庄が海外からの知識人、アーティストを集めて語った食卓もあり、そこには「濱田家のレシピ」も展示されていたので、益子の食べ物レポート、藍染工房や私が購入した濱田窯の器レポートなどど合わせて次回紹介することにする。なかなかスゴイ町だぞ、益子。
by midoriart | 2012-01-09 21:06 | Art
 大学の同期で現在名古屋市立大学大学院芸術工学研究科准教授の森旬子が、ひるがの高原のギャラリーで「基点」展を開いている。
 11月20日の最終日を前に、作家本人に連れてってもらって、ようやく見に行くことができた。せっかくの鑑賞ツアーなのに、あいにく東海地方は朝から雨。大変な天気の中、久しぶりのドライブなので、まずは関で降りて、鰻の辻屋で早めのランチ。

b0090333_20202974.jpg 人気の店らしく、開店前から爺ちゃん婆ちゃんが店の前に並んでいた。


b0090333_20211444.jpg 鰻丼の並。ご飯ムチャ多い。鰻はカリっと焼けてて香ばしい。美味いっ!食べ進んだらご飯の真ん中から更に鰻が出てきてビックリ。中に埋まってる想定なしで食べてたから、お宝見つけた気分。でも思ったより多くて、大食らいの私が不覚にも少々残してしまった・・・。


b0090333_2023864.jpg 腹ごしらえの後はひるがの高原のたかすファームを目指す。ここのオーナーが作ったギャラリーが展覧会場。あったかな雰囲気のログハウスに彼女の「基点」シリーズが並んでいた。スキー場で有名なこの地なので、今年の展覧会は「基点」展が最後、次の展覧会は2012年からスタートするらしい。


b0090333_2025178.jpg 左から作家の森旬子、愛知芸大時代の先輩K親方(男前なかっこいい先輩なので私は「親方」と呼んでいる)。


b0090333_20271329.gif 森旬子オススメのたかすファーマーズのオリジナルショップがギャラリーと併設しているので、のぞいてみると、あるある、私の大好物、乳系の商品だらけ!最高に美味しかったのがさけるチーズのブラックペッパー。


b0090333_2028251.jpg 旬子オススメの「カンコワイヨット」。日本初、脱脂乳から作った低脂肪・高たんぱくチーズ。とろんとしているから、パンや野菜にドレッシングみたいにしてかけられる。帰宅して早速、焼いたマフィンに垂らして食べてみた。かなり美味い!
 ヨーグルトも、チーズも、牛乳も豆腐も美味しかったからオススメ。「たかすファーマーズ」でネット販売もあり(別に宣伝するギリはないけど、本当に美味しかったので)

 展覧会鑑賞&鰻&チーズと、かなり高カロリーな1日になった。
by midoriart | 2011-11-19 20:31 | Art
 愛知芸大の芸術祭が11月3日~5日開かれた。在学中サッカー部に在籍していた私は、卒業してから2~3年はOB戦に出たり、見たりするために芸祭にも行ってたけど、だんだん時とともに、どんどん年寄り扱いされ、体力的にOB戦で走るなんてとんでもないことで、そしてるうちに日本を離れ、芸大とも芸祭とも縁がなくなっていた。
 でも今年は違った。昨年くらいから、愛知芸大建替に関する議論が熱くなっていて、日本のモダニズム建築家の一人、吉村順三がつくった愛知芸大を守ろう!という機運が高まってきていた。私の周囲には建築系に進んだ先輩・同期がたくさんいて、署名運動したり、貴重な吉村順三建築保護の展覧会があったりと、愛知芸大を思い出したり意識することが増えていた。
 さらに、私の大先輩にあたる奈良美智さんが一ヶ月くらい前にメールをくれて、「芸祭でおでん屋やるよ~」と教えてくれたのだ。いまや世界を飛び回ってる奈良さんが、芸祭でおでん屋。これは手伝いに行かねば・・・と私なりに気合を入れての芸祭。

b0090333_21131045.jpg せっかくなのでサッカー部のOB戦のある日にあわせ、もちろん私はもう出場しないけど、最終日5日に同期の友達誘って大学へ。懐かしいぃ~~~。これぞ吉村建築!4年間講義を受けた講義棟。この下がそれぞれの科や部の出店になっている。20年前と同じ店があるのも嬉しい。日本画は餅屋の「ぽん」、彫刻科は居酒屋「大刻屋」、サッカー部は「ゴジラハウス」、バスケ部は「ケシの花」などなどこれは愛知芸大の伝統なんだな。

b0090333_21155677.jpgこの店は初めて見たけど感動した。いかにも芸術大学らしい!弦楽器の学生の生演奏が聞ける喫茶店「GEN」だと。これはいいアイデア!それに曲もちゃんとしてる!

b0090333_21165159.jpg 奈良さんが現在彫刻科准教授の森北ちゃんとやってるおでん屋「ぽとふ」はどこかと探したら、あったあった。ちょっとA to Zの作品っぽい、ちっちゃいけど洒落た店。けれど開店は5時とある。そうそう、今日は奈良さんの講演が2時からあるのだった。こんな辺鄙な愛知芸大なのに、奈良さんの講演を聞きたいとすごい人数の人が集まっていた。コンサートでも始まるかという勢いで講演前から長蛇の列。世界の奈良のスゴサを思い知らされる。森北ちゃんのおかげで整理券もGETでき、長野からやってきた油絵科の先輩と一緒に2時間の講演を聞く。奈良さんが自分のことをこれだけ語るのを聞く機会はなかったので、ちょっとしんみり・・・

b0090333_2118592.jpg 講義棟横には夜のライブのためのステージも設置されている。私はこのステージで4年間歌ってたんだなーと感慨深い。3年の開きがある奈良さんと知り合ったのも、このライブステージ。油絵科の先輩と一緒にバンドしてたこともあり、私がステージに立つと、いつも奈良さんは一番前で踊ってくれてた。まさかあの芸祭に20年経ってまたやってきて、20年前に一緒にいた人と時間を共にするなんて思わなかった・・・。年取ったから、こういうことにやたら感動する。20年前と同じ場所、同じ店、同じ顔ぶれ・・・なんて幸せ・・・

b0090333_21215017.jpg さらに嬉しいことに、奈良さんの講演を聴きにいらした櫃田先生とも再会!!!先生がいれば、OPEN前のおでん屋「ぽとふ」にだってフリーパス。店内に入れてもらって奈良さん特製奈良漬とノンアルコールビールをいただく。そしておでん!美味いっ!
 OB戦で40歳過ぎた先輩たちがまだ走ってたのにも感動し、奈良さんの講演に心動かされ、懐かしい先生に会って、科が違う私のことを覚えててくださった事に大喜びし、奈良さんの店で呑み(酔えないけど)、昔の仲間と顔をあわせることができるって幸せ。20年前に戻った瞬間。
(写真右側に見えているのは、店内に奈良さんが描いたビルボードの一部)

b0090333_2124443.jpg しかししかし、今日は濃い1日なので、まだ終わらない。今度は名古屋市内に戻り、栄のKENJI TAKI GALLERYへ染谷亜里可新作展のオープニングを見に行く。亜里可さんも奈良さんと同じ時代の芸大油科の先輩。
 そこでまずあったのが、こちらも先輩の今村哲さん。まさに私が芸祭で同じステージに立って歌っていた「すげえバンド」のボーカル。私は入学して最初の芸祭で彼がストーンズを歌っているのを見たらいてもたってもいられなくなり、ステージを上っていって横からマイクを奪い、一緒に歌ったのがきっかけで、この油科の先輩方からお怒りをかった後に、すごく可愛がっていただけるようになったのだった。すべては芸祭から始まっている。今日長野から出てきて芸祭、この展覧会を一緒に回ったのも、油科の先輩ですげえバンドのキーボードという、バンドつながりの田村美奈さん。


b0090333_2128470.jpg そしてこの展覧会のアーティスト、染谷亜里可さん(写真の顔部分を隠せといわれたけど、こんなにちっちゃいんだから目に黒線入れるのやめましたよ~)。
 こんなに一気に芸大時代の先輩方に会えることなんてめったにないから、なんだか自分の原点に戻れたような、新鮮な気分だった。長らく生きてきて、なんでも自分ひとりで決めて歩くのが当たり前になってたけど、包容力あるやさしい先輩たちと会って、甘えたがりの私はなんだかホッとした。タイムスリップした芸祭での1日、ホント~に濃い1日だった。

●染谷亜里可 新作展 「Table Canon」
2011年11月5日(土)~12月22日(木)
KENJI TAKI GALLERY 11:00~13:00/14:00~18:00
日・月・祝 休廊
名古屋市中区栄3-20-25
by midoriart | 2011-11-05 23:06 | Art
8月7日、南山大学で教鞭をとっている濱田琢司氏のガイドで、キャンパス内に多く残るアントニン・レーモンドの建築を回ったツアー報告の第3弾は先回に引き続きG棟。G棟はキャンパスを南北に走るメインストリートの両サイドにあり、それをつなぐ渡り廊下が2階にある。
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 写真右の扇型屋根がG棟の600人教室、左手に当たるのが「南山大学建築ツアーその2」で紹介したG棟の階段教室群にあたる。

b0090333_95841.jpg あの扇型の屋根は内側の構造とも密接に関係していて、そのままにそれが梁と天井の役割を果たしている。このコンセプトは神言神学院の礼拝堂とまったく同じだ。

b0090333_1001687.jpg 入り口の壁面には階段教室群を備えたG棟と同じくカトリックの信仰を表現したフレスコ画が描かれている。よく見てみると、かなり傷みがきているので、最初に描かれたときからどのくらい変わっているのかはよくわからない。なにげに置かれている木のソファもむちゃくちゃ味がある。


b0090333_1021768.jpg「実はこの棟のトイレもすごく古いんですよ」
という濱田氏の言葉で、女子トイレをのぞくと、確かにスゴイ。本物の石が使われてる!この小さめのタイル!レトロな高級感がなんともいえず良ろしい。手洗い場のやたらに広いスペースも、ホラー映画とかに使えそうな空間。

 このG棟の600人教室は、最近では使用頻度が減り、取り壊しなんていう話も出ているという。ここまで多くの学生を入れて講義するケースが少ないことと、昔の建築物にかかるメンテナンスの費用が莫大だったりもするらしい。愛知県立芸大の吉村順三建築取り壊しプランが出たときには、卒業生の建築家たちがみな反対の手を挙げたけれど、建築や美術の学部がない南山大学の卒業生・在校生に、レーモンド建築の意味が分かる人はあまりいないかもしれない。
 でも、南山大学の良さって、広いキャンパスの中で統一されたレーモンド建築が点在していることだと思うんだけどなー。もっとこの良さを伝えることだって、知識を広め伝える教育機関の役目なんじゃないかと思ったりした。


b0090333_1010461.jpg 悲しい運命のまっているG棟を出て、次に連れて行ってもらったのは体育館。今ではプールやサウナ付の近代的体育センターがこの正面に出来ているのだけれど、レーモンド製体育館も現役。彼がこの八事の土地で見つけて建築の基調色としたテラコッタの赤色が曲線のモダンなフォルムに合ってキレイ。


b0090333_1012142.jpg まぁ。。。現実的に機能的なのかどうかとなると、わからないけれど、建物はカッコいいよなぁ。裏に回ると日曜日だというのに、グランドにはたくさんの学生さんが若々しい声をかけあい汗を流していた。アメフトか?いいなぁ~~~、なんともいえず若者の園・・・

 レーモンド建築はまだまだ他にもある。残りはまた次回に。
by midoriart | 2011-08-13 10:14 | Art
 8月7日、南山大学で教鞭をとっている濱田琢司氏のガイドで、キャンパス内に多く残るアントニン・レーモンドの建築を回ったツアー報告の第2弾はG棟。
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 まずはその前に、南山大学周辺の鳥瞰はこんな感じ。
 濱田氏によれば、レーモンドはこの八事の土地を見たときに、起伏のある地形をそのまま生かした状態で全体の構想を考えたという。ちょうど南北に尾根があって、それをまっすぐに残したまま、左右(東西)に棟が並んでいるというのは、確かによくわかる。


b0090333_1836450.jpg わりと広めの階段教室を数部屋備えたG30棟。自然光の採り方が見事。この明るさ、照明はいっさいつかわずにこれだけ内部に光が入ってくる。階段教室にはかなりの勾配があるので、一番奥の高さがこの一階のレベル、そして一番前になるとこの地下のレベルになる。
 しかし、この棟の印象っていったら、まるで愛知県立芸術大学の図書館や油科の棟のようだ。吉村順三がいかにアントニン・レーモンドの影響を受けているのかがよ~くわかる。

b0090333_1842522.jpg 地下へ降りて、吹き抜け部分をみたところ。自然光はここまで入ってくる。地下のひんやりした空気になんともいえない緊張感がある。かっこよすぎてゾクゾクする。



b0090333_18524042.jpgb0090333_18524975.jpg G棟内にあるフレスコ壁画。これもすべてレーモンドのデザイン。壁画上部のオレンジ色で書かれたラテン語は「万物は神によって創造された」という意味。レーモンド建築で有名な高崎市の群馬音楽センターでも、南山大学でフレスコ画を取り入れる前に、この技法が使われている。




b0090333_18443027.jpg 南山大学図書館の資料で見つけた写真。南山大学(山里校舎)の模型を囲んで中央に座っているのがアントニン・レーモンド。実際の建築に携わったのは、レーモンドの右にいる五代信作で、彼が教室棟・食堂棟を担当した。そしてその右横、佐藤一朗が本部棟・研究室棟・体育館等を担当している。
b0090333_18464280.jpg もう一枚、貴重な写真を発見した。1964年5月29日、山里校舎が完成したのを祝い、儀礼を執り行っているバブリック神父。さすがは歴史ある南山大学、こういう資料はきっと山のようにあるんだろう。

 G棟はキャンパスの南北を通る尾根(メインストリート)をはさんで両サイドにある。今日紹介したのは右側にある大きめの講義室で、左側にはコンサートや映画上映とかもできるんじゃないかという広い講堂になっている。そちらも味わいがあるので、次回にもちこすとする。
by midoriart | 2011-08-10 18:49 | Art
 私の母校である愛知県立芸術大学が吉村順三建築であることは、最近の新聞で芸大取り壊しの記事が多いためにわりと知られている。ところが、同じ名古屋(正確には愛知芸大は名古屋ではなく愛知郡長久手町)にある、吉村順三の師匠、アントニン・レーモンドによる建築群が今も現役で使われている南山大学のことは、意外と知らない人が多いのではないだろうか。
 アントニン・レーモンドについては南山大学のサイト内でも紹介がある。ボヘミア地方グラドノ(現在のチェコ共和国)に生まれ、1919年近代建築三大巨匠のひとり、フランク・ロイド・ライトの助手として帝国ホテル建設のために来日。その後1973年に85歳で日本を去るまで、第二次世界大戦前までの18年間と戦後の26年間のあわせて44年間を日本に滞在し、自然と風土に根ざした実用的で美しい建物を作り出した建築家として知られている。
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 そんなアントニン・レーモンドのコンセプトが丸々生かされて設計された南山大学。近くにあってもなかなかそんなことを考えて空間や建物を見るチャンスもなかったところで、ラッキーなことに南山大学で教鞭を取っている濱田琢司氏がキャンパスを案内してくださることになった。そして建築ツアー晴れの今日、普段はなかなか入れないレーモンドの空間の中にまで入ることができた。一回の記事にするのはもったいないので、小出しでいく。

b0090333_2130662.jpg 今日のツアーの一番最初の建築が神言神学院。円筒形の鐘楼を中心に5つの扇形をつないだ礼拝堂で、両端に神父さんたちの居住空間がある。いくつかの棟を案内していただいたけれど、私はこの建物がアノ時代の建築らしくてカッコいい~~~と思った。

b0090333_2132413.jpg 礼拝堂の空間も厳粛で神聖で一色ずつ配置した手作り感溢れるステンドグラスや塔のてっぺんから採った自然光の落ちてき方とか、ちょっとゾクッとする。内部の撮影はできないので、南山大学のサイトから写真を失敬した。

b0090333_21341932.jpg 入り口を抜け、礼拝堂へ向かう道はこんな感じ。木の扉も重厚。

b0090333_2135823.jpg これは1階エントランス部分の天井にあたる部分(バルコニー)から礼拝堂の横を眺めたところ。扇形が見てとれる。



b0090333_21362763.jpg 濱田氏に連れられ、このカテドラルの北へ歩みを進めると、グランドのような敷地があり、赤土が見えた。なんでもレーモンドは南山大学を設計するにあたり、この土地にある「赤土」の色を基調にしようと考えたそうだ。だからこの神学院にも、テラコッタ色が塗られている。そういえば南山大学のすべての建物が、新旧ともにこのテラコッタ色を基調としているわ。なるほど・・・


b0090333_2138413.jpg この堂々としたフォルム!一瞬、名古屋の街中にいることを忘れそうになる。この建物の機能についての紹介が最後になってしまったが、神言神学院は南山大学の設立母体である神言修道会が直接経営管理をするカトリック司祭・修道者・宣教師の教育・養成機関。一般の信者が礼拝するステンドグラスのきれいな礼拝堂の他、今日見学を許可してもらって(濱田氏のおかげ!)入った地下の礼拝所では、まさに宣教師になるべく学んでいる方々の講義室兼祈りの空間みたいなものがあって、こちらも異次元のような空間だった。

 今日の建築ツアーby濱田琢司氏、これはまだまだ序盤。南山大学の中にはまだまだカッコいいレーモンド建築がたくさん残っている。今日の濃いぃツアーの内容は引き続きこのブログにて。
by midoriart | 2011-08-07 22:14 | Art
 最近私の中で「民藝ブーム」がきている。というのも、この春にアノ民藝運動の立役者の一人、濱田庄司のお孫さんであり地理学者の濱田琢司氏とお近づきになったからなのだ。益子の人間国宝の孫が、まさか名古屋にいらっしゃるなんて思ってもいなかったので驚いた。京都へ寺巡りに行って河井寛次郎んちでのんびりしたことは数回あるが、益子参考館まではまだ行ったことがなかった。でもこうやって関わりのある方とお話しする機会が多くなると、ちょっと気になってたことが、どんどんブームになって興味が大きくなってくる。


b0090333_0375664.jpg そんな折、私同様に民藝ブームのきてる芸大の先輩が、こんないいモノを見つけてきてくれた。「日本民藝夏期学校」。日本民藝協会が毎年国内の民藝館で開いているものらしい。今年は豊田会場、倉敷会場でそれぞれ開かれる。
 この夏期学校は高額な参加費からしても、「相当な大人」が参加するものと思われる。私にはちょっと無理。しかし豊田会場での夏期学校には濱田琢司氏を交えた公開パネルディスカッションもある。せめてこれだけは聞きたい・・・


b0090333_038757.jpg そしたらあったあった。この講演だけに外部から参加することができたのだ。こうしてプチ遠足日和の日曜、私は「民藝ブーム仲間」の先輩と一緒に豊田市民藝館を訪ねた。
(写真は民藝館第一展示館。豊田市民藝館のHPより)

b0090333_039088.jpg 5年も通った長久手の芸大から30分ほどの場所にある豊田市民藝館。むちゃ気持ちのいいロケーションに3つの展示館があり、さらにこんな洒落た洋館もある。
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よく見ると窓のフレームがカブになっててカワイイ。残念ながら展示館内は撮影禁止なので、様子はお見せできない。詳しくはこちら⇒豊田市民藝館



b0090333_22504040.jpg 『「民藝」の現代的流用~定義の読み直しとともに~』という濱田琢司氏の基調講演、そして有松絞り作家、瀬戸の陶芸作家を加えたディスカッションを夏期学校参加のおじ様おば様50人と、外部からの聴講者50人で聞く。想像はしていたが、この私が最年少くらいという、”かなりの大人”な学校。
 濱田氏の「民藝」に対する疑問提起には興味深いものがあった。安価なイメージである民藝がなぜ高いのか、美的価値と機能美は一致するのかなどなど、ディスカッションの内容が深すぎて、わずかな時間では答の出ないものだけれど、ここんところを研究しておられる濱田氏のコメント、作る側からの意見など、全体のまとまりはおいといて示唆深い2時間だった。(写真:今回のではなく「濱田庄司とバーナード・リーチ」第4回企画展記念講演でお話し中の濱田氏)

b0090333_0395256.jpg そんなこと考えさせられた後の茶室「勘桜亭」での一服も美味しかった~~~。周辺の山に咲く花が小気味よく活けられてて菓子もおいしゅうございましたー。「大人」だねぇ~~~。。。


b0090333_040656.jpg 豊田市民藝館には陶芸や絞り染めの体験できる教室もある。窯に惹かれて見に行ってきた。こういう場を見ると、いつもワクワクしてくる。仕事場の空気はイイもんだ。


b0090333_0401833.jpg 私はちょっと遠出すると、その地の名産が食べたくなる。民藝館を後にして、「豊田って何があるんだろう?」と思って走ってたら「やな」の字を見つけて川沿いに車を止めた。でも見えるのは川遊びしてる子供たちだけ・・・
 その向こうに「駅前広場」とでかい看板があったので行ってみたら、こんな田舎情緒120%の駅が・・・。そしてレールはここで止っている。ってことは、これが名鉄三河線の終点「猿投」?結局鮎料理にはありつけず、空腹に負けてフツーの鰻屋で丼をいただいてプチ遠足は終わった。にしても今日の大人な夏期学校、楽しかった~。これからは時間見つけて今まで行かなかった民藝館や博物館巡りもしたいなー・・・って思うことが、「大人」になった証拠なんだろな・・・
by midoriart | 2011-07-24 23:16 | Art
 愛知県美術館で7月9日から始まった「棟方志功展」。朝もはよから開会式に出席した。
 なんといっても今回の展示で感動したのは全長26mもある〈〈世界の柵〉〉。著作権の問題とかあるだろうからここでは写真は出さないが、見てすぐにピカソの〈〈ゲルニカ〉〉を思い出した。しばらくこの作品の前から動けなかった。

 b0090333_1161093.jpg 志功といえば、こんな感じの宗教的な版画をイメージする人も多いだろうが、今回はアメリカへ渡って影響を受けた英語の詩を使った作品や、青森の田舎から出てきたおじさんが作ったとは思えない洗練された構図のミニマルな作品があったりして、志功の才能の幅と深さがよくわかる。
 ちなみに、この作品〈〈弁財天妃の柵〉〉の絵葉書は、購入するとそれが東北への義援金になる(1枚100円)。

 展覧会の内容についてはあまり書かない。版画、倭絵、書から陶芸にいたる志功の画業(画だけはないのがスゴイ)をたどる今回の展覧会では70件300点の作品を一気に見ることができるから相当に濃い展覧会だと思う。志功が大きな影響を受け、親交の深かった濱田庄司、河井寛次郎の作品も見られる。

 今日は開会式だったから、すごい人の中でゆっくりは見られなかったので、後日もう一度ゆるりと見に行くとして、お気に入りのミュージアムショップへ寄って被災地支援グッズからお買い物をした。
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 これは宮城県美術館のミュージアムグッズ。長谷川潾二郎〈〈猫〉〉を使った一筆箋(450円)。

b0090333_1116683.jpg 仙台のポストカード。エンボスでSENDAIの文字と伊達政宗(だと思う)が浮かぶ(154円だったと思う)。

b0090333_11171184.jpg 今回の買い物で一番気に入った一品。青森は弘前のさしこ。農村の人たちが藍染した布に一刺し一刺しして作ったという伝統的なものらしい。いろんなデザインがあって手仕事の味があってとてもイイ(315円)。

b0090333_1118495.jpg 愛知芸術文化センターの地下にあるブックショップでは今回の展覧会に合わせて「民藝」関係の書物が集められていた。雑誌『民藝』のバックナンバーも豊富。


棟方志功展の情報はこちら⇒「棟方志功~祈りと旅~」

 7月16日(土)には関連企画として津軽三味線チャリティーライブもある!
11:45-12:15 / 14:30-15:00 
会場:愛知芸術文化センター2階フォーラムⅠ
料金:無料 ※義援金の協力をお願いします ※椅子は100席用意
by midoriart | 2011-07-09 11:02 | Art