Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

6月10日◇Memory of Asia (交換プロジェクト・アジアの記憶)

 あと2日で『インドネシア復興100年記念展』が終了する。会場はジョグジャカルタ、王宮北のコーナーにあるジョグジャ・ギャラリー。基本的に私は空間を使ってモノをいろいろに配置するような作品を作っているので、展示はもちろんのこと基本的には撤去も自分ですることにしている。でも今回に限っては帰国の予定がすでに決まっていたため、どうしても撤去までインドネシアにいることができず、人任せの撤去になってしまう。作品梱包の状態やら、迷惑をかけてしまうギャラリーの関係者のことを思うとかなり心苦しいけれどやむをえない。


b0090333_13395848.jpg ジョグジャでもまだ新しいこのジョグジャ・ギャラリーはインドネシアではおそらく唯一、入場料をとる。もちろん国立の博物館とかは昔から入場料がわずかにあったけれど、美術を扱ってる公共施設ではいまだに入場料はないのが一般的。「美術なんて金払って見るもんじゃない」ってことか。
 そうした一般観客の考え方を変革するためにも、またこうした施設が入場料などから運営費を賄っていけるようにと、ジョグジャ・ギャラリーがチケット制を試して1年半くらいか。もちろんそれだけじゃやってけないので、裏にはたくさんの支援があると聞いている。ともかく、それなりの設備をもって運営しているジョグジャでも数少ないギャラリー(規模としてはけっこうデカい)のひとつといえる。
(『インドネシア復興100年記念展』の会場より)


b0090333_13405750.jpg 作品の性格上、他の作品と一緒に並べるのが難しかったこともあり、私はギャラリー1階にあるオーディオビジュアル室をマルっと一部屋もらうことができた。床も天井も壁も真っ黒という空間はなかなか個性的。今回の作品『交換プロジェクト:アジアの記憶(ブリタル編)』は、1945年に東ジャワ、ブリタルで起きたPETA(祖国防衛義勇軍)の日本軍への反乱に関わるもの。この事件後、日本軍は連合軍に破れ、インドネシアは独立に向けて勇気ある闘争の末にインドネシア共和国を築いた。そのもとになった人々、今はお爺ちゃんになっている人たちはつまり、インドネシアの英雄たちなのだ。


b0090333_13411853.jpg 私はいやいや兵隊にとられて戦争を体験したわが祖父と、このお爺ちゃんたちをダブらせ、また日本という国の歴史と当時のアジア諸国を重ねて見て、いろんなことを思うわけだ。そこから生まれたのが「交換プロジェクト」で、私の小さなヒト型の作品を、わが祖父と同じ時代に生きてきたアジアのお爺ちゃんたちに渡して、彼らの私物と交換してもらうというもの。
 

 展示室は独特な空間だったので、昨年愛知県美術館で展示したときとはまったく違った展示をすることができた。同じ作品でも、空間が違うとまったく違った見せ方ができるからおもしろい。真っ黒で天井の低い部屋の奥の壁に直接ドキュメントビデオを射影。


b0090333_1341377.jpg ブリタルで30人のお爺ちゃんと交換したヒトもガラスケースに入れて展示(今後もこのプロジェクトで別の地域のお爺ちゃんたちと交換するため、このヒトはまだまだジョグジャのスタジオにたくさん残っている)。


b0090333_13415047.jpg 今回の一時帰国にあわせ、樹脂でできたヒトを数十体連れてきた。これは日本で戦争を体験したお年寄りたちと交換するため。交換プロジェクトを始めたのは2年前のフィリピンで、今までに交換したのはフィリピンのマニラ、キブガン、そしてインドネシアのブリタルで、日本ではまだ交換してもらったことがない。日本という場所がら、そして私自身が日本人となると、どうも今までアジアの国でやってきたように、フレンドリーに楽しく交換してもらうことができるのかと少々不安ではあるのだけれど、地域を決めずに「日本人の、第2次世界大戦を記憶している、私の作品と交換するもののある人」を探して交換してもらおうと思っている。そうしていると今年の終戦記念日はすぐにやってくるかも・・・

(一部写真はMES56というジョグジャの写真家集団に所属のKawul君に撮影してもらった。Kawul、ありがと~)
by midoriart | 2008-06-10 13:42 | Art