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Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

5月7日◇バリの孫は僧侶の子

 1月末からこっち、国際交流基金主催のインドネシアでの大型展覧会『KITA!!』展のリサーチ、準備、参加作家のケアと超ハードな毎日を過ごしてきた。そして展覧会は4月18日に無事開会し、あっというまに閉会まで1週間となった。展覧会が終われば、また相当量の作品撤去という大仕事が待っている。そんな時期に重なって、ジョグジャカルタ・ギャラリーで5月20日から始まる展覧会に出品が決まった。となると自由に動けるのは今しかない。


5月7日◇バリの孫は僧侶の子_b0090333_0313512.jpg ってなことで6~9日まで急ぎ足でバリへ行ってきた。バリは第二の故郷、10年間世話になった木彫り師匠宅では私はほぼ家族扱いになっていて、3ヶ月も戻らないと農夫の父ちゃんが怒る。世話になったマデサナ兄貴の長女エリパニは私が自分の娘のように可愛がってる子で、19歳という若さでバリの僧侶に嫁いでしまった。彼女は過去に一度妊娠したのだが、不運にも生まれた子はわずか5時間でこの世を去った。そうしてこのたび4月12日に無事健康な男の子を産んだのだった。
(写真がエリパニ。19歳の若き母)


5月7日◇バリの孫は僧侶の子_b0090333_0315332.jpg マデサナ兄貴が電話をくれたとき、私は展覧会準備の真っ最中で、ある展覧会場で作品の搬入中だった。
「ミドリ~。婆さんになったぞ~~~」
とちゃんと私に連絡をくれた兄貴の気持ちも嬉しかったけれど、その後すぐに連絡したエリパニが
「ミドリ、名前考えておいてね」
と恥ずかしそうに電話口で言うので、ついつい泣けてきた。本当に最近は涙腺がゆるくていけない。予定より1週間早く生まれたこの赤子の誕生日は我が母、和子さんの誕生日の翌日。これもなにかの縁か。
(エリパニの母、マデサナ兄貴の妻。つまりはこの赤子の婆ちゃん)


5月7日◇バリの孫は僧侶の子_b0090333_032719.jpg 今回のバリ行きの目的はこの赤子と母ちゃんになったエリパニに会うこと、それから1年に1度の仕事、犬山(愛知県)にある野外民族博物館バリ島貴族の家の飾り布の注文。この2つだった。
  さらにもう1つ、学生時代の後輩の頼みで、現在バリに来ている日本人青年に会うというミッションもあった。その青年はバリ一番の観光地、クタビーチにいたので、私もムチャ久しぶりにツーリスト気分を味わうため、クタで待ち合わせした。90年初めてバリを訪れたときには、ここを歩いたんだな~~・・・と18年も前の記憶を思い出しては時の速さにため息。18年前には日焼けも怖くなかったもんだ。あぁ、時は流れる・・・。
(懐かしのクタ海岸、今もたくさんのサーファーがいる)


5月7日◇バリの孫は僧侶の子_b0090333_0323513.jpg 私が10年暮らしていたのはウブド。ここでも今回はちょっとツーリストぶりたくって、観光客向けの店が延々と続く通りを徒歩でフラついてみた。けっこう新しい店ができてるもんだ。そしてバリの長い友達、ピアニストのトモコさんと夕陽の沈む時間にチーズとワインをお伴にお喋りタイム。彼女とはバリに戻ったら必ずと言っていいほど会っている。


 赤子に私が命名する時間もないまま、僧侶の3代目となるこの子にはデワ・アリッという立派な名前がつけられていた。そうそう、バリではこうして新しい生命を授かると、これが誰の生まれ変わりなのかを聞きに行く。この子はエリパニが嫁いだ先のご先祖様の生まれ変わりで、その人も昔やはり立派な僧だったらしい。特別な能力がないと操れないといわれているワヤン(影絵芝居)の演者でもあったという。もっと面白いことに、エリパニの腹に宿ろうとするとき、別に女のご先祖様の魂も生まれ変わろうとしてたらしいけど、2つの魂が競い合って、結果こっちの「もと僧侶」だった魂の方が勝ち~でリインカーネーションに成功したという話。

 夜にはエリパニの嫁ぎ先に赤子を見に行った。ジョグジャで買ったベビー用品持参で僧侶の家に着くと、僧侶(エリパニの義理の父親)と旦那(彼もすでに僧侶としてお努めしているけど、サイドビジネスで画廊のスタッフもしている)が出迎えてくれた。爺ちゃん僧侶、孫の誕生がかなり嬉しいらしく、毎晩エリパニたち新婚夫婦の部屋に来ては孫の顔見てニコニコしてるらしい。

5月7日◇バリの孫は僧侶の子_b0090333_0325751.jpg そしてこの夜、爺さん僧侶が私のことを変な呼び方するので聞いてみたら、なんと私は「ドンパン」なる呼び名をつけられていた。これはバリ語で「ダドン・ジェパン」、つまり「日本の婆さん」って意味なのだ。これが略されて「ドンパン」。なんか響きとして安っぽいのが気になるが、初めて「婆さん」と呼ばれても嬉しい気分だった。めったに赤子なんて抱っこしないのだけれど、ドンパンとしては一度は抱いてやりたくて抱っこしてみた。本当に赤いんだねー、赤ん坊。
(ドンパンとデワ・アリッ)


 あっという間のバリだったけれど、仕事も片付け、懐かしいクタでツーリストして、ウブドで呑んで、孫の顔も見られたから結構濃い~時間だった。いい息抜きにもなったかな。こうしてると次は『KITA!!』展の撤去に、自分の作品の搬入が始まる。この週は出品作品のタッチアップで忙しくなりそうだ。
by midoriart | 2008-05-07 00:28 | Bali