Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

12月9日◇ギュウとチュウ

  今、豊田市美術館でおもしろい展覧会をやっている。『篠原有司男と榎忠 ~ギュウとチュウ』展だ。私がチュウさんと出会ったのは2年前だったか、彼が大阪のキリンプラザで個展を開催中のことだった。短い一時帰国だったけれど、エノチュウさんの個展がどうしても見たくて、日帰りで大阪に行ったら、ラッキーなことにちょうど会場でチュウさんを見つけた。
 もちろん、それが彼との初対面だったのだが、なぜか私は勝手に初対面とは思えない親近感を覚えた。というのも、彼の作品をドキュメントした写真の中に、私が名古屋でお世話になった名古屋市美術館の元学芸課長、山脇氏の姿があったり、名古屋でお世話になっているアーティスト、久野利博氏が『セブン・アーティスト』展で彼と一緒だったこともあるからだ。
 突然話しかけた私の話もにこにこ聞いてくれたチュウさんは
「インドネシアでもガンバりぃ~やぁ~」
と握手してくれた。

 そんな出会いから、ず~~っと再会したこともなかった(って、私が日本にいないんだからチャンスもなかったわけだが)のだが、今回私が一時帰国し、個展を開催していたら、多忙なチュウさん、わざわざ愛知県美術館まで観に来てくれたのだった。2年ぶりの再会。
 また会えた感動よりも、こんなほんのちょっとのきっかけで知り合った私なんかのために、わざわざ会場へ足を運んでくれるという、チュウさんの人情に感動した(11月30日『霜月オムニバス』参照)。


b0090333_23124821.jpg で今日12月9日は、豊田市美術館で彼と篠原有司男氏のアーティストトークがあったので、朝から整理券を得るべく、気合入れて豊田へ出かけた。ギュウさんは美術雑誌でもお馴染みで、いつもパワフルな活動が多いのは知ってたけど、喋りもパワーがある。そして作品もかなり派手。関西風に言えば「コッテコテ」ってところか。二人のトークも対照的でおもしろかった。


b0090333_2312585.jpg 今回なによりも感動したのはチュウさんの新作。アーティストトークで説明があった新作『FALCON-C₂H₂』。ハヤブサを意味する「ファルコン」を使った祝砲パフォーマンスも先日この美術館で行われたらしい。過去の作品部品に、新しく彼が旋盤で作ったパーツを組み合わせた大きな武器のようなこの金属の塊には、チュウさんの美学がまるまる出てて身震いしそうな迫力だった。

b0090333_23131040.jpg 手前には「LSDF」の文字。これは「JSDF」、Japan Self-Defence Force(自衛隊)をモジったもので、Life Self-Defence Force、自分のことは自分で守れという意味を備えているという。チュウさんらしい知的なシャレが効いている。


b0090333_23132335.jpg もう一つの新作は『PATRONE-35』。パトローネとは、昔は誰でも使った35ミリのロールフィルムが入っている円筒形の筒。コダック、フジなど、最近はデジタルが台頭してきて、出る幕なしの物体。これが産業廃棄物処理工場で固められているのを見たときに、チュウさんはその美しさに感動したという。彼のセンスが加わり、展示室の暗闇にたたずんだこの「捨てられるモノ」の山は、確かに悲しい美しさがあった。


 いやぁーー。。。本当にチュウさんの仕事っていい。
 彼は旋盤工として、つい最近まで働いていた。仕事をしながら、コツコツと作品を作り発表してきた。そんな彼の姿勢も私は憧れる。基本、私は若者が好みで、自分より年上の男性にはほぼ興味がないのだけれど、チュウさんには惚れる。
 彼の作品を見終わると、最後のフロアに彼のポートレイトがあった。その中の1枚に、彼が黙々と作業している姿があった。これがまた渋くて感動・・・


b0090333_23135173.jpg 私もモノを作っていくという生き方を選んだ者として、彼のような姿勢から学びたいと思う。真面目に自分の表現を追及し、黙々と作業する職人的な榎忠。本当~~~にカッコいい。名古屋から1時間、駅から徒歩15分の道にはなんにもなく、冬の冷たい風が骨に染みるような1日だったけれど、豊田市美術館の『ギュウとチュウ』展のおかげで(個人的にはもっぱらチュウさんの作品のおかげで)、帰りは心がほんわりあったかかった。

 この前、私の個展会場に来てくれたときには渡せなかった、私がジョグジャで発行している日本語ガイドブックと、10年前に私が書いたバリの体験記を今日渡すことができた。長年勤め上げてやっと自由な時間がたくさんできたチュウさん、今度はぜひ、インドネシアへ遊びに来て欲しいもんだ。

※豊田市美術館がスゴイのは、会場でも撮影可能なこと。そのおかげでこんなにチュウさんの作品を紹介することができた。こんな太っ腹な美術館、なかなかないだろう。豊田、やるもんだ。
by midoriart | 2007-12-09 23:11 | Art