Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

8月20日◆彫刻家弔問とオバケ屋敷スタジオ

 今日の調査は、ご一行様が世界遺産であるボロブドゥール遺跡を見学してからの開始だったので、午後からスタート。最初にインドネシア近代絵画誕生時代のジョグジャとバンドンをまたにかけた活動で忘れられないG・シダルタ氏のお宅を訪問した。


b0090333_09495.jpg G・シダルタ。多くのドローイングや絵画作品も制作した精力的な彫刻家。2006年没。
(2004年の調査でスダルタ氏にインタビューしている私)

 3年前の後小路さんの調査で、私は彼の家を訪ねて日本軍占領時代のインドネシアのアーティストについてインタビューする機会を得た。お宅を訪ねるのはそのとき以来になる。彼は私が開催したジョグジャカルタの個展に2度とも足を運んでくださった。歳をとってからも、若いアーティストと親しく、フットワークのいいお爺ちゃんという印象だった。そんな彼が癌におかされ、他界したのは1年ほど前のこと。

 福岡アジア美術館の学芸課長時代にシダルタ氏の彫刻作品をコレクションし、彼の活動については深い研究をされている後小路さんは、今回の来イの前からジョグジャでのスケジュールに、シダルタ氏の遺族弔問をリクエストしていたので、私は故人の長男に電話して、訪問したい旨を伝えておいた。
 そうして訪れたシダルタ宅、過去にインタビューをした部屋は、今は故人のミュージアムとなっていた。最初は長男のバタラさんが、
「母に会いますか?」
というので、故人の奥様を呼んでもらった。今ではミニ・ミュージアムとなった客室に入って後小路さんの顔を見るなり、小さなオバアチャンになった奥様の身体が震えて涙を落とされた。


b0090333_073462.jpg 年寄り大好きな私は、こういう姿にとても弱い。ましてや、その部屋には、故人が亡くなるギリギリまで作っていたという小さな彫刻作品と、その前に作った十字架にかかるキリスト像(彼はクリスチャンだった)、その横には彼が最後に書き残したものが額に入れられていた。

「去年から私の身体は病魔に襲われ始めた。痛みも、死への不安も、この十字架が癒してくれる。どうか、この私に平安を・・・」
といった詩のように美しい言葉を読むだけでもつらいのに、私はこれをご一行様に訳すという仕事がある。声が震えてちゃんと訳せないので本当に困った。


 故人が一度も発表したことのないドローイングを収蔵した部屋、故人の寝室へも、奥様は私たちを通してくださった。貴重な資料を見せていただいて、私たちは次のアポイント場へと移動した。


b0090333_081194.jpg 今日訪問したアーティストは3人。
 アグス・スワゲとティタルビはアーティスト夫婦。普段はそれぞれに作品発表しているけれど、去年のシンガポール・ビエンナーレではユニットとして招待を受け、コラボレーションの作品を発表した。彼らは今回の調査で必要な若手アーティストよりもずっとキャリアの多い中堅作家だけれど、後小路さんとは面識もあるし、やはりインドネシア現代美術の中で海外展に出てる作家として、最近の若いアーティストをどう見てるか意見を聞くのも重要ってことで少しだけ訪問。


b0090333_083196.jpg 次に寄ったのはユスラ・マルトゥヌス、若手彫刻家で私が2005(名古屋)、2006(東京)年で企画した「Passing On Distance」展の参加作家の一人でもある。つまりは、私のオススメ作家。しばらく遊びにいかずにいたら、彼はスタジオを移っていた。新しいスタジオに行こう行こうと思って行けずにいたので、私にとっても今日の訪問は楽しみだった。
 

 すでに日が暮れかけていたこのとき、2日前に会ったヘリドノからショートメッセージが入る。
「ミドリ、もしもゲストを僕のスタジオに連れて行きたかったらどうぞ。僕ももう少ししたら行くから」
あの不思議ワールドを作り出すヘリドノのスタジオは私も一度も訪ねたことがなかったので、これはとっても嬉しいお誘い。ましてや、インドネシアにいることがめったにないほど海外での活動が多い彼に会えてる今回の調査、かなりラッキーだ。


b0090333_0112143.jpg ユスラのスタジオを出て、同じエリアにあるヘリドノのスタジオへ。結局彼は私たちが待ってる時間に現れることはなかったのだけれど、スタジオ管理を任されているおじちゃんの案内で、すべての作品コレクションを見ることができた。古い建築を買い取ったという彼のスタジオは、イイ意味でいかにもオバケ屋敷。管理のおじちゃんに聞いたら、ニコっと笑って、

「へぃへぃ、いますよ。オランダ人でね、とても美しい顔の青年ですわ。それとジャワ貴族らしい娘さん。夕方くらいになると歩いてますけどね、でもお客さんを脅かしたりは絶対にしませんから」
と、フツーに話してくれた。


b0090333_0125551.jpg ジョグジャ最後の夜はジョグジャ名物のグドゥックを食べ、残った鶏の骨をすべてうちの犬の土産にもらって帰宅。明日からはバンドン。
by midoriart | 2007-08-21 23:58 | Art