Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

6月1日◆猿面野焼とフィリピーノ・シャーマン

 キブガンの山々を見ながら起きる。涼しい空気が気持ちいい。ササンとレイは早速今日の野焼きに備えて新聞窯のチェック。今回の野焼きは、信楽に住む私の知人、陶芸家のMさんのアイデアを参考にした。新聞紙でブロックを作り、それを濡らして窯を作るという野焼きの方法だ。それをササンに伝えたら、彼なりにネットで情報を収集し、レイ君と試作を重ねて今回のような簡易窯に行きついた。基礎だけはレンガ、構造は木の枝、壁はダンボールと泥水に浸した新聞紙。


b0090333_0195544.jpg 「レイ窯」と「ササン窯」、二つの窯に10時の火入れが終わると、あとは6時間火のコントロール。火がついちゃったら、後は彼らに任せるしかないので、私は並行して進んでいる開会儀礼を見に、シティホール前の広場からレイ君工房へ移動した。

 こっちではすでに今日のイベントの無事を祈る生贄となる豚が待っていた。フィリピンでは結婚式など祝いの席で豚や水牛をおろす。バリととっても似ている。バリでは何度も豚をおろして腹を割いて腸を川で洗うなんてことを見たり手伝ったりしてきたので、フィリピン式がどんなか気になった。


b0090333_020862.jpg まず一番違うのは突き方。バリでは首を狙うけれど、ここでは心臓を刺す。その前にシャーマンが地酒を巻き、祈りを唱えた(写真左の白いTシャツの老人がシャーマン)。


 その後豚全身を火で炙り、しっぽはポツンと切り取り、子供に渡す。今回このしっぽをGETしたのはマリコさんの次男ビリッグだった。これをもらうと結婚式のブーケみたいに何かいいことがあるのか地元の人に聞いたけれど、ちゃんと意味を教えてくれる人はいなかった。しっぽも最後は食べるらしい。


 炙った豚の毛をキレイにそぎ取り、ようやく解体。そしてレバーを丁寧に取り出してシャーマンに見せる。これで今日の儀礼の吉兆を占うらしい。この立派なレバー。


b0090333_0203043.jpg シャーマンはこのレバーの玉の部分(私にはこれがどういうパーツなのかよくわからない)を見て言う。
「お~、これはとてもジューシーだのぅ。今日の儀礼に関わる者はみな吉じゃ」
 この玉の部分が乾いてジューシーじゃない場合もあるという。そうだとその儀礼の主催者は、もう一頭豚を用意しなくちゃいけないらしい。こんなに大きな豚となるとフィリピンでも非常に高価なので、占いで凶と出ちゃったら余計な出費が多くて困るそうだ。
 一頭で吉が出て、主催者のCGN代表マリコさんもほっと一息。


b0090333_0204658.jpg そして内臓が鍋で煮られ、肉は塩味で茹でられる。

b0090333_0214224.jpg バリの儀礼で使われる豚料理と比べたら、かなりシンプルで大味。ほとんど味ナシ。でもこれは儀礼だからこそだという。にしても一切れがでかいよ~~。


b0090333_022062.jpg これはキブガンで作られているサヨーテ・ワイン。サヨーテというのは日本でいうハヤト瓜。バギオからキブガンへ向かう道中、急斜面の山々にはサヨーテが成りまくっていた。あまりに急斜面で何も植えられないところ、サヨーテは簡単にツタを這わせて成長するため、みんながサヨーテを植えているそうだ。ハヤト瓜で作ったワインを試してみた。ちょっと砂糖の甘みが気になるものの、野焼きのイベントでお祭気分だから何呑んでも美味い美味い・・・。


 そしてシティホール広場に戻ると、レイ君とササンが汗だくで火の守りをしていた。こんな紙製の窯でも、まだその熱さに耐えている。さすが一度試作で焼いてるだけあって、150個の猿面を入れた二つの窯、頑張っている。
 火入れから5時間、ササン窯の表面が焼け始めた。新聞紙の壁から火が出ると、またそこに泥水で濡らした新聞紙を貼って抑える。それを何度も何度も繰り返し、最後には全体が燃え上がる。ササン窯は5時間、レイ窯は約7時間燃えた。彼らの話ではササン窯の下部で300度、上部で500度。レイ窯は下部が500度、上部でなんとか700度くらいまで達したらしい(といっても温度計で測ったわけではなく、焼けたものの状態などで判断しているのだけれど)。


b0090333_0221913.jpg 人間、火を見ると特別な感情が起こるものだと思う。こんなキブガンの自然に囲まれて、フィリピンの儀礼を見た後で、手作り窯の焼け落ちていく様を関係者のみんなと見守って、なんとも感動的な夜だった。結局午後から降ってきた雨の中、広場に屋根はあったものの全身ずぶ濡れで窯を守った二人のアーティストの動きも感動的だった。そしてキブガンの夜はふける。
by midoriart | 2007-06-01 21:18 | the Philippines