Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

5月23日◆キブガン村での交換プロジェクト

 山岳地帯の澄んだ空気で目を覚ました。というか・・・。キドラのいびきが大きくて眠れなかったぁ~~~・・・。結局昨晩は2つあるベッドを私とキドラが占領、ササンは床にペラペラのマットを敷いて寝るはめになった。

b0090333_2375271.jpg  他のメンバーも早くから起きて、宿舎のテラスからキブガンの静かで平和的な朝焼けの風景を眺めていた。軽く朝食を取り、すぐにレイ君のセラミック工房へ。私とササンは制作に集中できるよう、工房から少し離れた場所に仕事場を用意してもらい、ワークショップ参加者はもともとのレイ君工房で猿面つくりを始めた。


b0090333_238795.jpg にしても上手い。キブガンで暮らしているフツーーの小学生が作ったものとは思えない出来栄え。芸大生だってここまで作れるか怪しいってくらいの完成度。今回バギオから来たコーディレラ・グリーンネットワークの皆さん、マリコさんキッズ、みんなが猿面作りに挑戦。


b0090333_2381729.jpg  ササンはインドネシアから6キロもする枝の石膏型を持参しているので、これで枝を大量に作る。私はキブガン村に来る途中で見た瞑想してるようなゴリラの横顔に惹かれたので、メディテーション・モンキーを全身作ることに決めた。


 今回のバギオでのイベントに、私は二股をかけている。
 一つはコーディレラ・グリーンネットワーク主催の国際環境デー『Where Have All The Monkeys Gone?』でのグループ展、そしてもう一つが去年から2箇所を巡った個展の最終プロジェクト。2006年8月にケソン市のギャラリーとフィリピン大学を巡回した「The back of Affection」展のまとめになる個展も同時に開催される。
 1000体のヒト型オブジェを1000人のフィリピン人と交換し、その交換物を展示するこの個展は、初回Green Papayaで約500体、フィリピン大学内ギャラリア1で約300体の交換を終えていた(インドネシアからフィリピン輸送時に70体近くが破損)。そして今までに残ったヒトを、今回バギオ滞在中にすべて交換し、初回個展から保管してある交換物のすべてを展示する予定。

 過去2回の個展では、ギャラリーに来た人とその場で交換をしていたのだけれど、今回は私が村へ出向き、普段美術とは縁のない暮らしをしている人たちに交換をお願いしている。そのため、すべての交換が終わって交換物のみを展示しても、プロセスを観客に理解してもらうのが難しい。そこで今回は企画の最初の時点から、ドキュメント映像を残そうと考えていた。そしてそれのできるバギオのアーティストといって浮かんだのがキドラッ・タヒミックだったのだ。
 彼がどんな人であるのかは5月15日付『バギオ個展のパートナー:Kidlat Tahimikというオジさん』を参照していただきたい。

 超多忙なアーティスト、キドラおやじは、今回の私のプロジェクトに興味を示してくれ、このキブガン山篭もりにも出発時から同行してくれている。そこで私は今日のワークショップを半日で切り上げ、昼食後の半日は村に入って村人に交換をお願いすることになった。


 キブガンでは、フィリピンの公用語タガログ語も通じない。そこでマリコさんが今回のプロジェクトにはこの村出身の青年レネ君を私のアシスタントとしてつけてくれていた。彼と一緒に村に入り、事情を説明。わけわからん日本人にやってこられて困惑の村人をキドラが撮影する。

 過去の2回は芸大生の観客が多かったので、交換物にはボールペン、学生証コピー、キーホルダーなどが多かったのだけれど、さすがは山岳地帯の田舎、最初のオバチャンは自分ちに生えてるパパイヤの木から、小さな実をとり、それを洗って交換してくれた。


b0090333_2392054.jpg  次に訪ねたのはこんな棚田を下っていった先に一軒ポツンとあった小屋に暮らす86歳のお爺ちゃん。私はお爺ちゃん子だったので、こういうお爺ちゃんに一番弱い。ましてやこのお爺ちゃんが、今ではこんな平和そのものの場所に、昔おおくの日本兵がやってきて戦ったのを見たなんて話をしてくれるものだから、私の本当のお爺ちゃんの姿とダブって涙が出てきた。


b0090333_2394163.jpg そんなお爺ちゃんは、私の差し出したヒトをじっと見つめ、
「何と換えたらええだろうなぁ・・・スプーンもあるけど、一個しかないからあげられんし・・・」
と、収穫して結んだ稲をくれた。86歳になるまでこの棚田で農夫として生きてきたお爺ちゃんが収穫した一掴みの稲は私にはとてもとても貴重な交換物となった。


b0090333_2395695.jpg 今日はこの村で21個のヒトが交換された。こののどかな村に、あのお爺ちゃんの傍らに、私の作ったヒトがこれからもずっといると思うと、なんとも満ち足りた気持ちになった。キドラも実際に交換していく過程を撮影しているうちにかなり楽しくなってきたようで、国際的映画監督の顔になっていた。


 夜はまた合宿のような夕飯タイム。キドラは今日撮りたてのビデオをみんなに披露。おそらく彼は撮れるだけのものを撮って、後から一気に編集するという作品の作り方をするのだろう。だから自分自身、どんなふうに撮れているのかを確かめたかったのだと思う。そして彼も、今日の取材中に拾った、マントヒヒそっくりな石を交換してくれた。

b0090333_232443.jpg  とてもシャイだというキブガンの村人たちとの交換がうまくいくか心配だったけれど、今日の成果はなかなか。撮影も出だしとしてはかなりイイ感じで進んだのでホッとした。これでいったんマリコさんご一行様はバギオへ戻る。私はもう1日残ってグループ展の作品、メディテーション・モンキーを完成させ、市庁舎周辺の人々とのヒト交換を続けることにする。
by midoriart | 2007-05-23 23:06 | the Philippines