Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

3月31日◆フィリピン・バギオでの猿の森プロジェクト

 昨年8月フィリピン大学美術学部に招聘され、大学でアーティスト・トークを、GREEN PAPAYAというギャラリーで個展をした。大学でのスケジュールの空きをみて、バギオを訪ねたときに知り合ったのがキドラ親子。キドラ・タシミッ(Kidlat Tasimik)は山形ドキュメンタリー映画祭でずいぶん昔から高い評価を得ている映像作家。三人の息子は全員美術関係に進んでいる。お母さんはバギオ市で最初の女性市長となった人で、キドラ自身は海外で教育を受け(確か法律関係を学んだと聞いた)、ドイツ女性と結婚している。よそから来た男性がフィリピーノを嫁にするパターンが大半な中で、この逆カップルは珍しいらしい。


b0090333_12562811.jpg いきさつを話していると長くなるのではしょるけど、このときに出会ったバギオの皆さんとの縁が今まで続き、今年6月にバギオで開催される「世界環境デー」というでっかいイベントの中で、私の個展と、バギオのアーティストたちとのワークショップが実現することになったのだった。
(バギオで出会ったキドラとマリコさん。キドラの運営する店VOCASにて)


b0090333_12565318.jpg 今回のバギオで私の関わるイベントは2つ。
 一つは昨年の個展のファイナル。1,080体のヒト型オブジェをすべてフィリピンの人々と交換しつくす。そして1,080個の交換物をバギオの会場で展示する。去年の個展では、街中にある小洒落た画廊スペースに来てくれたお客さんとの交換だったけれど、今度は違う。私が村にヒトを担いでもって入り、農家の爺ちゃん婆ちゃんに交換をお願いするのだ。
(昨年の個展の様子。Green Papayaにて)


b0090333_12571911.jpg そして、そのプロジェクトの様子をドキュメントしてくれるのが、キドラ親父。私はまだ彼の作品を見たことがないのだけれど、知ってる人の話によれば、とても温かみのある人間臭いドキュメントを撮る人らしい。私が今回のプロジェクトの内容を伝えたら、彼は快く撮影を引き受けてくれた。だから彼には、私がなぜこの交換をしたいのかという裏の話ももっとしっかり説明しようと思う。日本軍がフィリピンでやらかした「デス・マーチ」のことを・・・。
(交換したものは私が準備した8センチ四方の座布団に載せて展示される)


 そしてもう一つは、三人のアーティストとのコラボレーション。
 今回の「世界環境デー」を主催するのは、バギオ市にあるコーディリエラ・グリーン・ネットワーク(環境NGO)、その代表がバギオでミュージシャンのアーネル・バナサン(CDは日本でも出ている)と結婚をして暮らしている日本人女性マリコさん。去年のバギオ訪問の際に彼女と知り合い、いつか一緒にバギオで何かやらかそう!と企んでいたところ、思ったよりも早くこんなチャンスが来たというわけだ。


b0090333_12575964.jpg 最初に私が思い浮かべたのが竹ちゃん。本名はカワヤン、キドラ親父の次男だ。昨年バギオを訪ねたとき、キドラの息子の中では一番私が親しくしていた青年。キドラは日本通なので、日本の竹寺にちなみ、自分の息子に「竹」を意味する「カワヤン」とつけたという。だから日本語で「竹ちゃん」と呼ぶとけっこう喜ぶ。
(昨年竹ちゃんのスタジオを訪ねたときの写真)


 マリコさんの提案で、せっかくならバギオ市から山岳地帯に入り込もうということになり、そしたらキブガン村にアメリカ人の陶芸作家レイ君がいるから、彼も巻き込もう・・・と話は進み、さらに
「せっかく緑さんはインドネシアから来るんだし、インドネシアのアーティストも誘ったら?」
ってところまで進み、そこへ運良くマリコさんと作ったプロポーザルが認められて日本の財団から助成もついたので、予算的にもここまでの夢が実現することになった。
 レイ君というのは、アメリカ人のお母さん、フィリピーノのお父さんをもつ。バギオから車で3時間ほど奥へ入ったキブガンという村で焼き物をしているそうだ。私は去年の訪問で彼に会うことはできなかったのだけれど、マリコさんのコーディネートで彼とは今、チャットしながら企画を相談している。

 キブガンといってもなかなか日本語のガイドブックには掲載がないのだが、ルソン島北部の山岳地帯の中でも特に美しい景色が有名で、「フィリピンのスイス」と言われているらしい。さらに昨晩わかったのだが、キブガンとは現地の言葉で「猿」の意味! 昔は猿がたくさん棲む深い森があったのだそうだ。今も猿の顔をした岩のある山がそびえていて、キブガンの象徴となっているという。あ~~~。これはやっぱり縁だ。
 主催のマリコさんからの提案もあり、レイ君とのワークショップでは「猿のすむ森 ~Have you seen monkeys in the forest?~」ってテーマで村の子供たちと一緒に猿面を作ることに決定。


b0090333_1259263.jpg 今回は展示会場も魅力的。キドラ親父はバギオではクレイジーで通っていて、本当にかなりクレイジーな空間を運営している。VOCASという名のその店はバギオの中心セッションロードにあり、ビルの最上階であるにもかかわらず、中には水車が回り、酔っ払った息子たちは火を焚いて踊る。彼が尊敬する黒澤明の『夢』の1シーンを彷彿させる装置から、ジョニーディップが出てきそうな『カリブの海賊』チックな一角があったり、三次元空間が四次元にも五次元にもなっちゃったような異質な、けれどなぜか居心地のいい空間。
(私のアーティスト・トーク後、突如焚き火が始まり、伝統楽器の音とともにみんなが輪になって踊り始めた)

b0090333_12592691.jpg 普段はここで展覧会、コンサート、パフォーマンスなども開催されていて、私が初めてバギオを訪れた去年8月には、ここで私のアーティスト・トークも行われた。突然のアイデアでそうなったというのに、50人近くのアーティストがさっと集まったのを見て、キドラと息子竹ちゃんの人脈がいかなるものかがよくわかったもんだ。
(この1枚のみバギオ関係のブログ『バギオとフィリピンのビーチリゾート』より転載)

 しかし、ADSL効果はすごい。これのおかげで今ではボイスチャットも可能になった。フィリピンの田舎に住んでる彼らと、リアルタイムで打ち合わせできちゃうのは本当にありがたい。「世界環境デー」は今年、6月5日にルソン島バギオ市で始まる。
by midoriart | 2007-03-31 12:59 | the Philippines