Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

2月10日◆インドネシア映画『GIE』感想文

 インドネシアに長く暮らしていても、なかなかこっちのミュージシャンや役者で気に入る人がいない。そんな中でも一人だけ、私が5年くらい前から目をつけてる若き俳優がニコラス・サプトラ(Nicholas Saputra)。

b0090333_2111537.jpg 2002年にインドネシアで大ヒットした映画『Ada apa dengan Cinta?(アダ・アパ・ドゥンガン・チンタ=チンタに何が起きたのか?)』の主役に抜擢され、そのシャイで世の中斜めに見たようなスタイルが世の娘たちにも大ウケしたのだった。
(←映画のポスター。相手役のディアン・サストロワルドヨもムチャ美形、演技力はおいといて、とにかく美しかった)

 そんな彼の新しい映画(といってももう2年前になるが)が『GIE(ギー)』、1960年代、インドネシア共和国の独立から20年のまだ新しい国インドネシアが、初代大統領スカルノに不満を持ち始め、レボルーションを起こす頃の実在の人物が主人公で、そのSoe Hok Gie(スー・ホッ・ギー)役をニコラスが演じている。

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 名前からもわかるように、彼はインドネシアの華僑の子。子供の頃からたくさんの書物に親しみ、早くからインドネシア政府のシステムに疑問をもつ。彼はジャカルタの国立インドネシア大学に進み、当時盛んだった学生運動に参加していく。おもしろいことに、このニコラス・サプトラ自身、現在インドネシア大学の学生。
 映画では当時の共産主義者への弾圧なども描かれていて怖い。思い起こせば、私がインドネシア(バリ島)に暮らし始めた90年初頭は、もちろんすでに初代スカルノ大統領から2代目スハルノに変わっていたけれども、これがまたスカルノに負けず劣らずかなりの独裁政治だったので、当時見ることのできるテレビ局といったら国営のTVRIとTPI、それに1局だけ民放があったんじゃなかったか。とにかくすべてのニュースが検閲されコントロールされていたので、見ていてもなんだか現実味がなかった。
 

b0090333_214815.jpg そう考えてみると、本当にこの国はまだまだ若いんだなぁと思う。デモクラシーなんて名ばかりで、今でもなんか裏幕が操ってる感ムチャあり。でかくて(広くて)若いから、そしてオマケに(言っちゃ悪いけど)貧しいから、何しでかすかわからん国ってことだな。ここまで広くて他民族で多言語で文化も宗教も違う国、日本で過去に出たどんなにスゴイ殿様でもなかなか統治できないだろう。デカ過ぎ、ホントに。
(←これは『GIE』の前の作品『JANJI JONI』のポスター)


 話が脱線してしまった。話は『GIE』なんだった。
 今回のニコラス、なかなかしっかり役にハマっててよかった。何度見ても、この青年はやっぱりキレイな顔のつくりをしていると思う。そうそうこの映画がすごくよかったと薦めてくれたのは、フィリピン人の友人だった。彼は以前、インドネシアに1年間調査できていて、そのときにニコラス・サプトラを知り、大のお気に入りになっていたのだった。たしかに、ゲイの彼が好みそうな整ったきれいな顔つきと肢体をしているわ。

b0090333_215680.jpg 今回の映画を見て、少しだけ日本の学生運動時代とイメージがかぶった。いったい、あの戦後の日本で、GIEのような英雄的な学生とかっていたのだろうか。あの時代はまったくリアルタイムからズレているのでなんともわからない。ただ年末になるとよくやるテレビの「昭和史」みたいなので、白黒映像で見るだけで・・・。
(→ゲイにも大人気のニコラス。私からしたらインドネシアらしい顔つきではまったくないのだけれど、こっちの子は「あの顔はジャワだ」という。だったら私の周囲にかっこいい青年がいたっておかしくないのに、一人としていないのはなぜ???)

 国を憂いて何かアクションを起こすということが、現代の日本には無縁なのかもしれないなぁ・・・。そしてインドネシアも、今ではどんなレボルーションがあったところで、所詮根っこは変わらないとでもみんな悟ったのか、GIEのような英雄はまったく生まれる気配もない。
by midoriart | 2007-02-10 21:05 | Film/Movie