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Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

政府の再建プログラム

 今日はいつか話したいと思っていた、インドネシア政府が現在進めている「Program Rekonstruksi(再建プログラム)」のことを書こう。被災地が今、どこまでの状態になっているのか、これはおそらく義援金をくださったメンバーも一番気になることだと思う。
 でもその前に、一体インドネシアがどういう国なのかをイメージしてもらうために、今日付けの国内新聞コンパスの記事を抜粋した。

『こどもに普通の家庭生活を』
2004年12月のアチェ津波災害から約2年が経つ。社会省の調査では、いまだに孤児院に預け
られた子供が2500人。うち半数は災害後に親や親戚が連れてきたもので、災害後の生活復帰が如何に困難なものかがわかる」
という内容。2年前のあの大きなツナミ、今もまだ多くの問題を抱えたまま。
 

政府の再建プログラム_b0090333_1165212.jpg さて、今回の地震で被災した家屋に対し、政府は「再建プログラム」として一律1500万ルピア(約20万円)の建設費用を支払うとした。6~8世帯で1グループを作り、グループ長を一人たてる。政府からの支給金はグループ長がこのため政府指定の銀行で新たに開設した口座に、1グループ分がまとめて入る。でも、この支給金は一度に全額支払われず、今回は初回分として600万ルピアが出た(地域によっては800万出たところもあったと聞いた)。これはそれぞれに家屋の基礎を作るための資金とされている。

政府の再建プログラム_b0090333_1172461.jpg ここで疑問。1500万ルピアで家を作れと突然言われ、一般市民がどうやって計画を立てるのか?だいたい、想像してみて欲しい。我々が建てた3つの幼稚園、平均して2600万ルピアの建設費がかかっている。仕切りもない一つの箱、5x9mで萱葺き、フロアはセメント。トイレ。これだけですでに2600万ルピアがかかっている。さらに我々の場合、費用節約のため、もともと基礎があるロケーションを選んでいるから、基礎地を作る費用を含んでいない。いったい1500万ルピアでどの程度の家が建てられるのか。


政府の再建プログラム_b0090333_118226.jpg 政府は1グループ(6~8世帯)に一人のグループ長を置き、4グループに対して一人の進行係(その村から選出)、技術進行係(政府側から送られてくる)を置いた。さらにその上に、8グループに対して一人のコーディネーターをつけている。村から選出された進行係は政府から送られてきた技術進行係と一緒に、グループ内で同じ建材をまとめて購入し、基礎地を作っていく。技術進行係は、すでに政府で決められている材料を、ちゃんと村人が購入したのかをチェックしていく。支給された600万がちゃんと建材に使用されているのかをチェックするわけだ。


政府の再建プログラム_b0090333_1184413.jpg こうしたピラミッド構造ができた場合、インドネシアをちょっとでも知ってる人は、そのピラミッドの層の数だけ汚職があることを容易に想像するだろう。はい、そのとおりです。すでに今までに、それぞれのグループで、それぞれのやり方で、いろんな汚職、中間搾取が事実行われているのだ。こんなこと、よそ者の私ですら簡単に想像できることだから、政府が予想しないわけないと思うんだけど、なんでこの国はこんな政策しか立てられないのだろう。

 実際に聞いた話からケースを挙げよう。あるグループ長が、全世帯におりた600万ルピアをまとめて受け取り、本来ならそのまま600万ルピアずつを配分するところ、勝手な言い草。
「俺が一人で銀行行って、書類のコピーして動いてるんだから、その分10万ずつ引いといたから」
確かにグループ長ともなれば、他のメンバーより忙しくなるかもしれない。でも勝手な理屈で同意なく人の金を差し引いちゃいかんよ。これはインドネシアによくあるパターン。人の金と自分の金と、区別のつけられない輩。政府にもいっぱいいる(ま、日本も同じか)けど・・・。


政府の再建プログラム_b0090333_1191785.jpg 第1幼稚園のあるタンキル村のあるグループは、もっと独裁。グループ長はグループ内に嫌いな人が入っているもんだから、こんなヘリクツ。
「お前んちは土地所有の証明書がないから、600万ルピア全額は渡せないからな。400万ルピアでやれ」
あのねー、もう政府がちゃんとそれぞれの家屋をチェックして、必要書類があるかどうかもチェックして、それを通った人にお金がおりてるの!だからこの家長に対する600万ルピアは、すでにグループ長の口座にまとめて入ってるの!200万ルピアをどこへ持ってくんだ、グループ長よ!?

 みんなが建て出すから、建材不足・人手不足。政府指定の建材が手に入らない。でも期限までに作らなければ、第2期の支給が出ない。村人も必死。やむをえず、指定以外の建材を使用することにした。でも、ここには4グループに一人、政府からの技術進行係がいる。仕方ないので、メンバーで10万ルピアずつ出し合い、これを技術進行係への賄賂とし、お上へは指定の建材を使用したと報告してもらうようにお願いする。私はタンキル村でこの例を聞いたのだけれど、この手の話はおそらく山と出てくるだろう。


政府の再建プログラム_b0090333_1195267.jpg ちなみに、この「再建プログラム」第1期の支給金は340億ルピア(約4億5000万円)、そしてプログラムに携わる政府側からの担当者(技術進行係とコーディネーター)への給料が合計170億ルピア(約2億2500万円)という。被災者からは「政府からの見張り役に支払う金がそんなにもあるんだったら、純粋に建設費にあててくれ」と反論があったにも関わらず、結局政府はこのポジションをそのまま残した。

 中には技術進行係が村人と衝突して辞退したって例もあれば、村人が技術進行係をやたら怖がって、ビビりながらプログラムが進んでる例もある。なんにしてもあまり賢く、健全な策には思えないのはけして私だけではないだろう。

★今日掲載の写真は地震当時のものではない。11月24日、タンキル村で撮影したもの。この村では、上記の「再建プログラム」によって建設を始めたのはたったの1グループのみで、残りは支給金の順番待ち。
by midoriart | 2006-11-30 23:14 | Jawa Earthquake