Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

アメリカ軍の落とした平和の鐘

 バギオへ行く前から数人の友人から
「ミドリだったらバギオへ行ってウカイウカイを見なきゃあダメだ」
と言われていた。朝娘さんを学校へ送って時間の空いていたバギオ在住のMさんに付き合ってもらい、キドラ親父のお迎え10時半になるまでウカイウカイを見に行くことにした。   

b0090333_1145455.jpg 日本語っぽい耳ざわりの「ウカイウカイ」とは「引っ掻き回す」という意味らしい。香港からでっかいダンボール箱で送られてくる不良品やユーズドを売っている、つまりは古着屋のこと。箱の底から引っ掻き回して品定めするのでこの名がついたという。バギオにはこのウカイウカイの店がとても多く、マニラの古着屋も、バギオで仕入れるくらいだという。今日最初に見つけたとんでもない日本語の一品は子供のジャケット両腕の部分に「もうすぐママになる」とプリントされたもの。

 10時半ホテルに戻り、Mさんも一緒にキドラの案内でまずは木彫の村を見る。やはりバリのUBUD村と同じで、白人たちの持ち込んだデザインの大量生産が多かった。木の質もバリのものとほぼ同じ。ここではそういうことさえわかればよかったので、これでまずは満足。

b0090333_1153366.jpg 次に見たのはこの教会の鐘。
 以下の話は、昨晩アーティストトークの後で行ったライブハウスで、キドラが私にしてくれた。


「ボクは日本の終戦50周年のときヒロシマに行ったんだ。当時ボクの仲間でロバートってヤツがいてね、彼の作品は6メートルのでっかい真鍮製の針を作って、それをヒロシマの地に刺していく、つまり大地を癒す(ヒーリングする)ってコンセプトの作品だったんだ。ところが、ロバートのヤツはその前に死んじまってね。だからボクがその作品をヤツの代わりにヒロシマの大地に刺すことになったんだ。

ちょうどその頃、アシン村(バギオの中心から10キロほどの村)に新しい教会を建てていたんだけれど、そのとき村の川下からアメリカ軍の不発弾が見つかったんだ。僕の背ほどの高さのものだったよ。その頭の部分を切ってね、それを鐘にしたんだよ。そしたらこれがいい音でね・・・

ヒロシマの平和式典に、針の癒しの作品と、そして不発弾から作った教会の鐘を持っていこうと思ってね、100キロ以上ある鐘も日本へ運んだんだ。そして95年のヒロシマで、爆弾からできた鐘をゴーーーン…と鳴らして日本のみんなと合掌したんだ…」

b0090333_117379.jpg もともとお爺ちゃん子で戦争体験が自分の中にあるくらいに思っている私にとって、さらに8月15日が近い今、必然的にこの話をキドラから聞いたような気がして、レゲエで盛り上がってる若者の熱気ムンムンのライブハウスにいるのもお構いなく、私は泣いた。そんな私を見たからか、今日キドラがこの教会に連れて行ってくれたのだ。

 約300年をスペインに統治され、その後アメリカに占領されたフィリピンの山間に落とされた一個の爆弾が、教会の一番高い場所に吊るされ、ヒロシマでは平和を祈るために鳴らされた。この鐘をヒロシマへ持っていこうと思ったキドラ親父の発想がまたスゴイではないか。

b0090333_1162541.jpg Mさんはここで娘さんのお迎えのために帰っていった。彼女は今回の素晴らしい出会いの一人だ。彼女が最近発行した絵本の挿絵には私の大好きなバギオのアーティストが使われているので、今日はそれも一冊分けてもらった。アリガトウございます!
b0090333_118133.jpg さてその次にキドラ親父はバギオ北部にあるイフガオの伝統織物が見れる場所へ連れて行ってくれた。パッと目にはその明るい色あわせがペルーのテキスタイルを思わせる。もともと山岳民族イフガオのふんどしとして織られていたものらしい。

 キドラ親父は土産用ネックレスが並んでいる中から一つを選んで私にいう。
「今では伝統的なものの他に、土産として売れるものならなんでも作るようになってしまったけれど、これは本当の伝統のものだよ。ブルルっていってね、イフガオのお米の神様なんだ。これはボクからミドリへのプレゼントだからね」
キドラ親父~、ツボを知ってますなぁー、ホントにあったかい人だ。

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 キドラ宅で次男のカワヤンと一緒に軽くランチを済ませた後、このアーティスト親子に送られてバスターミナルへ。再会を約束して午後1時40分発のバスに乗って、今さっき午後8時UP内の宿に戻ってきた。標高1500メートルから戻ったら街中は暑いわ・・・。


b0090333_1191080.jpg それにしても濃い3日間だった。素晴らしい人との出会いがあると旅は何倍にも楽しくなる。バギオは初フィリピンした去年から気になっている街だった。1年経ってようやく行くことができた。そして気の合う人たちとの出会い。キドラもカワヤンも今度はゆっくり来て一緒に作品を作ろうと言ってくれている。キドラのクレイジーハウスに泊まって、バギオのアーティストたちと何かできそうだ。
 収穫多きバギオの旅は今回のフィリピン滞在の中でも貴重だった。次への展開が自分でもとても楽しみだ。
by midoriart | 2006-08-13 23:13 | the Philippines