Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

バギオの大御所ベンキャブとキドラ

 朝一番の約束は、昨年フィリピンの「ナショナルアーティスト」になったベンキャブさん。なんでもフィリピンでは3年に一度かで国が文化功労賞みたいなものを出すらしい。ベンキャブさんはそれを受賞して「フィリピンのアーティスト」となった人。こんな人と簡単に会えたのも、国際交流基金マニラ支局長Bさんのおかげ。

b0090333_1717.jpg インドネシアの重鎮たちも生きてるうちから私設ミュージアム作っちゃえるくらいにお金持ちなんだけれど、ベンキャブさんもかなりスゴイ。これ、彼のスタジオ。もともと標高の高いバギオの街の、さらに高台にある彼の家からの景色は、インドネシアの金持ち重鎮アーティストが多く暮らしているバンドンにとてもよく似ている。
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 今回私がフィリピンに来て、自由時間ができたときに行ったCCP(フィリピンカルチャーセンター)で、彼のシンガポールでの新作展を見てきたばかりだった。すでに作品を見てきたことを話すと彼はとても嬉しそうに、そのカタログにサインまでしてくれた。そして最後にBさんも一緒に記念撮影~。
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b0090333_192579.jpg 彼のアンティークコレクションと作品がぎっしりのスタジオを後にして、次はバギオのアーティスト村といわれるタマワン・ビレッジを訪ねる。ここにはバギオの伝統絵画を守るアーティスト達が集まっていて、昔からの建造物に泊まっていくこともできるらしい。
 まー、日本の各地にある「xx村民芸館」的な感じ。入場料を払って中に入ると昔の建物の中に絵画が飾ってあり、観光客の似顔絵描きなんかも待機している。ここではサラッと流してBさんの次の仕事のアポイントメントのために山を下りた。

 一泊しかできないBさんとは昼食までを一緒に過ごしてお別れ。そこから私は昨日出会った日本人女性Mさんのオフィスを訪ね、彼女のダンナさんでミュージシャンの、アーネルさんを紹介された。お相撲さんにいそうな、キリッとした顔立ちのハンサムな彼はバギオよりもっと北部出身で、カリンガ民族音楽をベースに音楽を作っている人。いきなりCDプレゼントされて大感動。日本ではTV番組でも取り上げられた「鼻笛」の演奏もできる人。今いただいたCD聞きながらこれ書いているのだけれど、シンプルだけど暖かいメロディ。声もとても素敵だ。

 Mさん夫婦と昼間っからビール呑みながら(これはフィリピンでは当たり前みたいだ)昨日のVOCASでの失態をネタに話していて、Mさんに言われた。
「実際さー、昨日集まってた子たち、ミドリさんがいったい何者なのかまったくインフォメーションがないのよね。キドラも何も言ってないし。せめて何してるのか、昨日みんなの前で紹介したらよかったわよね」
 確かにそのとおりだ!
 今からキドラのごく親しい人にだけ声をかけなおして、私の持ってきたノートパソコンの画面の中で作品を見せるだけならできる。早速キドラの自宅に連絡すると、数年前に火事で焼けてしまった家の再建中で現場にいるという。キドラと親しいMさんの旦那さんが
「よし今から見にいこう」
っていうので、Mさんとこの3人の子供たちも一緒に移動。


b0090333_1101642.jpg 彼の焼けた家は、VOCASにもましてクレイジーだった。こうなったらフィリピンのガウディと言ってもいいのかもしれない。建築家に見せたいわ、常識を無視したようなこの建物の作り方。とにかくスゴくて写真と私の能力ではとても説明できないわ・・・。
 キドラはドイツ人女性と結婚し、3人の息子は上からビデオアーティスト、現代美術作家、デザイナーをしている。真ん中のカワヤンがVOCASを任されているので、私は彼に今晩友人数名だけ集めてくれないか聞いてみた。
 大体、彼ですら、私が何者か知らなかったので、今やってる個展の案内状を見せると
「うわ!そうだったのか!」
自分の仲間だという意識が生まれたのか、いきなり自分の作品のファイルを持ってきて私に見せてくれた。そして午後8時半から再度VOCASで会う約束をする。写真は作品説明をするカワヤン(手前はMさんの娘がカワヤンの被り物を使用中)。
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 インドネシアが長いので、アーティストとの約束は半分しか信用していなかったのだけれど、カワヤンはなんと約束の5分前に着いた私より先に来ていた!これだけのことにまず感動。予定通りジョグジャでのこどもテント・プロジェクトの紹介から始め、次に私の作品のプレゼンテーション。酔っ払って見てた数人はその辺で適当に寝転がってるだけなのに、真剣に最後までつきあってくれたのがカワヤンとキドラ親父だった。
 カワヤンはまだ26歳の若さなんだけれど、私の作品を最後まで見た後で
「これは全部つながっているんだね。ミドリ自身が気づいていないかもしれないけれど、今までミドリの作ってきた作品と、考え方、そして今のジョグジャでの活動、すべては一本の線上にあるのがボクにはよくわかる」
と言ってくれた。
 とりあえずこのクレイジー親子には気に入られたらしく、その後近くのライブハウスに連れて行ってもらい、午前2時までレゲエの生演奏聞きながら踊り呑みあかし、キドラに送ってもらって宿に帰った。息子3人が酔っ払って踊り狂う姿を微笑みながら見ているキドラは、なんて幸せな親父なんだろう。
 バギオで出会った重鎮アーティストのベンキャブさんとキドラ。大金持ちで気品あって長身でカッコいいベンキャブさんは一般的には確かにナショナル・アーティストの威厳もバッチリなんだけど、私は街の人々から真剣に「気がフレてる」と思われてるキドラ親父の人間臭さや暖かさがとっても好きだ。呑みながら、私が聞いた木彫りと織物の村に明日連れて行ってくれるとまで行ってくれた。バギオ、もっともっとじっくり歩き回りたい街だ。
by midoriart | 2006-08-12 23:57 | the Philippines