Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

バリ・ビエンナーレ

今年はインドネシアでたくさんの大型美術展がある年になる。日本では三年に一度のトリエンナーレが秋から横浜や福岡で開催されたが、インドネシアの主流は二年に一度のビエンナーレ。8月にジャカルタでCP財団主催のCPビエンナーレが開かれたのを皮切りに、11月はバリ、12月はジョグジャカルタ、そしてあまりのラッシュに開催を来年に延期したジャカルタ・ビエンナーレと続く。
 この中で一番古いのはジャカルタ・ビエンナーレで、80年代から開催されている。CPビエンナーレは今年で二度目の開催となったが、先月報告したようなポルノ・アート事件があったり、運営上の問題があったりで、第二回をもって終了すると正式な発表があった。


b0090333_1717527.jpg 
さる11月26日に開会式を終えたのはバリ・ビエンナーレ(2006年1月4日まで開催)。今年が第一回となるこの大型展覧会はバリ島内で10会場を使用、参加作家200余名、全作品350点という巨大さ。作家もビエンナーレ委員会からの招待部門と、「プリ・ビエンナーレ」の名で本開催の前にバリとジャワ島の数会場で開催された公開公募展からの選抜作品部門とがある。選考委員のほとんどがバリ在住のアーティストや画廊オーナー、彼らは私が長年バリで制作していたことも知っているので、きっと今回の展覧会に招待してくれたのだろう。  私は搬入のため19日にバリ入りし、三日かけて作品をセッティングした。私に当てられたギャラリーは、住み慣れたウブッの北部にあるシカ現代美術ギャラリー。1996年、バリで最初に展覧会をした縁のある場所だ。今では展示スペースを奥へと広げ八年前の倍の広さになっていた。
 私はもともと人に見られていると制作ができない性質なので、早めにギャラリーに入り、他の作家とディスプレイのタイミングがかち合わないようにした。26日オープンなので、多くの作家は二日前にバリに来て作品のディスプレイをする予定でいるところ、私は20日から設置を始めた。もと木彫りの師匠宅に泊まり、高校を卒業したばかりの師匠の娘エリパニをアシスタントにして二人でギャラリーにつめた。ギャラリーの中では美術とはまったく無関係の大工さんたちが他の参加作家の希望に合わせて壁面を作ったりしている。仕事の手を休めながら私の作品を見て、 「これはいったい何?」 答に困るような質問を投げかけてくる中、適当におっちゃん達をあしらいながらなんとか13段、2.6mの柱を積み上げた。


b0090333_1718142.jpg
七段目の内部。天を指した印相がガラス箱に入っている(陶)。周囲はインドネシア、日本の金糸入りの布を使った小さな座布団。ガラス箱の真上に小さな照明があり、手を照らしている。

b0090333_17182325.jpg
一番下の段には八方位を向いた八体の人間像が立っている。身体は木彫り、顔は一つずつ陶を焼いて作った。ここにも真ん中に暖かな色みの照明が当たっている。


そしてバリ・ビエンナーレの初日。オープニング会場は10会場の一つであるARMA(Agung Rai Museum of Art)。このビエンナーレに合わせてシンガポールからインドネシア現代美術の調査に来ていた知人を誘い、オープニングに出席した。インドネシアでは一般に午後7時半がオープニング・タイムなのに、午後5時とは早すぎる、明るすぎる。実はこの日はウブッ村の寺院で何十年に一度という大寺院祭があり、関係者の一部はこちらにも出ねばならず、そのために開会式が早まったのだと美術館のスタッフが裏事情を教えてくれた。さすがは信仰の島バリ、現代美術の大型展覧会であろうとも、神様の行事はそれよりもずっと優先されるべきものらしい。

b0090333_1719249.jpg
ARMAの裏庭がオープニングの会場となった。雨こそ降らなかったからよかったものの、雨季にこの場を準備しているとは、なんという度胸。正面に見えるのは、普段観光客がバリ舞踊を鑑賞できる野外ステージ。

どこの国でも同じ、退屈なバリ州知事の挨拶、委員会紹介などの後、これまたバリならではのウェルカムダンスが始まった。が、バリ島以外の都会から参加している作家たちにはそれなりに新鮮らしく、カメラを構えている人もいた。チーフキュレーターは、このバリ・ビエンナーレが「バリ=商業主義的な美術」というイメージを変え、他の地域の宗教や文化とインターアクトしながら発展していくきっかけになるべきこと、現代美術を追って伝統美術を置き去りにするのではなく、昔からの継承美術も大切にすべきであることなどを語った。オープニングでのバリ伝統舞踊は、そうした想いの一つの現れなのだろう。
 このビエンナーレ実現の裏には、オートバイ・パーツ会社の大きな資金援助があるため、サブに「アストラ・オートパーツ・アート・アワード」と題されている。12月30日、バリ・ビエンナーレ閉会式に、今回の出品作品の中から四名の優秀作品が選ばれ、2500万ルピア(約30万円)の賞金が送られることになっている。さてさて、アワードはいったい誰の手に渡るだろうか。
by midoriart | 2005-11-03 17:16 | Art