Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

12月18日◇フィリピン滞在記・比日慰霊祭atハパオ

 インドネシアはジョグジャカルタ、メラピ火山噴火以降、現地の親友チャハヨと提携して活動しているKODOMOプロジェクトが継続して活動しているため、義援金を送ってくださる皆さんへの報告を毎日更新していて、なかなかフィリピンでの滞在制作についてブログ更新ができなかった。
 自分のまとめとして、イベントの最終日までをここで記録しておく。

b0090333_2205719.jpg 今回のフィリピン滞在では、世界遺産の棚田が広がるハパオでの立体作品制作。私が代表理事をしているスンダランド・アート・ネットが愛知モリコロ基金から助成を受け、第二次大戦で犠牲となった日比の人々に対する慰霊と鎮魂、そして平和への祈りをテーマとしたアート・インスタレーション&パフォーマンスを開催することになったのだった。


 イベントの会場イフガオ州は、第二次世界大戦で日本軍が撤退し、最後に山下奉文(ともゆき)大将が捕らえられた地。大戦末期の飢餓状態、武器も弾薬もなかった日本軍兵士の多くが命を落とした地であるとともに、極限状態の中でイフガオ族のコミュニティでの略奪・殺戮などの残虐な行為もあったと記録されている。


 ここ数年、第二次世界大戦の記憶をテーマに作品を作ってきた私にとって、この地は考えさせられることの多い場所だった。日本とフィリピンの人々への追悼の意味をもつイベントであるならば、当時ここで何が起こったのかをちゃんと知ってから作品を作りたいと思った私は、フィリピン在住でスンダランド・アート・ネットの副理事でもある反町眞理子さんから、占領時のフィリピンのことを書いた書籍を数冊貸してもらった。

b0090333_2262275.jpg イベントの行われるハパオに入ってから、制作日数はわずか4日。毎日朝から晩まで動いた。3年前にフィリピンを訪ね、制作のためにフィリピンのお年寄りを訪問したとき、現地語と英語のわかるアシスタントとして私を支えてくれたレナート君が、今回も私の制作アシスタントとして付き添ってくれた。
 バギオで泊めてくれたKidlat Tahimik(写真)。彼は日本でもたくさんのファンをもつドキュメンタリー映画作家。今回のイベントに興味を示し、バギオから8時間かかるこの地まで来てくれた。


b0090333_2294052.jpg アロマキャンドルを中に入れてひっそりと火を灯せるようにした5本のランタンを当日イベント会場となる棚田に運ぶ。


 大阪から参加されたシタール奏者の南沢靖浩氏、尺八の福本卓道氏、サックスと笛の山本公成氏、そしてスンダランド・アート・ネットのメンバー、山梨の音楽ユニット「KURI」が現地のミュージシャンと一緒に慰霊の音楽を奏でる中、水田では私の作品に火が灯された。
 連日の雨はどうなったのか、このときだけは一滴の雨もなく、雲の隙間から満月が覗いた。しんと静まった棚田にはアコースティックな音と、ランタンの火。この地で生命を落としたフィリピンの人たち、日本兵たちの霊は、今ここに集ってくれているだろうか。
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 この日、私はとても不思議な体験をした。ミュージシャンたちが水田の横に作ったステージでリハーサルをしている間、作品の設置を終えた私は水田を見下ろせる丘にある小さな小学校の入り口に座り、眞理子さんから借りた本を読んでいた。
 そのとき、本の内容が悲しいわけでもなく、私の気持ちは平常のままだったにも関わらず、突然涙が溢れてきたのだ。普通、涙が出るときには自分の中でなんらかの感情が動くはずなのに、自分で驚くほど、本当に勝手に目から水が溢れてくるような感じだった。それも身体をしゃくりあげるほどの号泣。自分の身体なのに、まったく身体と気持ちが分かれたよう。号泣する自分の身体を、まったく覚めた自分の心が見ているような、なんとも不思議な感覚だった。
 そして気づくと、私の耳にはフルートの音色だけがキレイに聞こえていた。それはステージでリハーサルをしている公成さんの音だった。他のミュージシャンの楽器の音も鳴っているはずなのに、私の耳に入ってきたのはフルートの音だけだった。
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 この話をリハーサル後の公成さんに話したら、同じように涙ぐんで
「来てくれたんだねぇ・・・よかった、よかった・・・」
と私をHUGしてくれた。私と彼には誰かが来てくれたように思えた瞬間だった。

 そうそう、今回私が使用したのはこの棚田で育った稲を材料として漉いた紙。在フィリピン日本人の紙漉き職人ASAOさんがこの地でフィリピンの子どもたちにワークショップをしながら漉いた紙が素材になっている。私はこれを自然にそのまま帰したいと思い、パフォーマンスをした現代舞踏家JUNさんに、パフォーマンスの中で燃やしてしまうようにお願いした。彼はそれを承諾し、祈りの舞の最後に松明で燃やしてくれた。
 ミュージシャン、現代舞踏家、地元の人たち、みんなの祈りはこの地に留まっている霊たちに届いたのだろうか・・・

 
by midoriart | 2011-01-21 22:28 | the Philippines