Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

2月2日◇ジョグジャ・アートツアー2日目

 今日は昨日ジョグジャを案内した森美術館キュレーターAさんを案内するジョグジャのアートツアー2日目。昨日のツアーを終え、Aさんからのリクエストは、いろいろなアーティストを訪問したいとのことだった。昨晩のうちに思い当たる友達に連絡をとり、数人にアポイントを入れた。


b0090333_2236815.jpg アーティスト訪問の前に、アートスペースをひとつ見ることに。これはジョグジャ市内を南のパラントゥリティス海岸方面に向ってずっと南下したTembi(トゥンビ)という地域にできた新しいスペースで名前はそのまんまTembi Contemporaryという。

 毎回展覧会があるたびに、我が家にも招待状をいただいていながら、なかなかタイミングが合わなかったり、興味ある展覧会がなくて行ったことがなかった。せっかくAさんもいらしているこの機会にと出かけた。ここはバレンタインギャラリーというクアラルンプールやシンガポールにもギャラリーをもってる人が、ジョグジャ在住の白人のオッチャンと組んで作ったアートスペースだった。できて2年目。印象としては、今のインドネシア現代美術事情そのままで、売れる絵画を集めるための倉庫っぽいものだった。


b0090333_22405086.jpg その後、私が過去にインドネシアの現代美術を紹介すべく、『Passing On Distance』という名で日本へもっていった展覧会(名古屋と東京を巡回)に参加してくれたアーティスト、Yusra Martunus、Handiwirman SaptraのスタジオへAさんをお連れした。
 これはHandiwirmanのスタジオ。彼も昨日のリヨンと同様、ここ数年であっという間に引っ張りだこになった若手作家。10年前、私がジョグジャに来た頃は、1日インスタントラーメン一食で暮らしていた。それが今や国内外のコレクターが彼の作品を待ってる状態。そして昨年土地を買い、スタジオと家を建てた。


b0090333_22435584.jpg 訪問したときに制作していたのが手前のピンクの作品。最近ではミラノのギャラリー、台北の美術館など、海外でも頻繁に発表している。なんたって彼は第1回シンガポールビエンナーレのインドネシア代表。数年前は制作しても発表の場もなく、家が近かった私とはギターを弾きながら夜な夜な歌いまくる仲間だったのに、いまやそんな時間はまったくなくなってしまった。稼ぎ頭の彼が友達と遊ぶのを、妻はまったく許してはくれない。苦労の時代を知ってる私としては、彼の活躍はまことに喜ばしいのだけれど、ギター仲間が減ったって意味ではかなり寂しい気がする。


b0090333_22465310.jpg あまりに忙しそうなHandiwirmanのスタジオを早々に引き上げ、次に行ったのはEko Nugrohoのスタジオ。彼も若くして、そのPOPな作風は早くからヨーロッパで評価され、リヨンビエンナーレにも参加している。今回のツアーでAさんに紹介した彼らみんなに共通して言えるのは、見た目にはフツーーーのインドネシア青年で、けしてオシャレな格好をしてるわけでもないのに、作品から見えるセンスはかなりのものだ。
 Ekoは主としてミューラル(壁画)の作品が多い。だから作品を売ることが難しい。そんな彼は今、ジョグジャにお店を持っていて、ここで彼のドローイングTシャツ、ジャケットなど、手ごろに若者が買っていける商品として販売している。


b0090333_22502360.jpg 昨日訪ねたSangkringのバリ人アーティスト、リヨンはその空間を後輩達の発表の場として使って自分の成功を「還元」あるいは「貢献」している。そしてEkoは、自分が海外で見てきたアーティストとしての生き方、生きていく方法を、後輩達と共有している。彼のショップ「Daging Tumbuh Shop」は最初の1年、彼一人の資本で始まり、若いアーティストが何を作っても、この店で売れるようにその場を開放していた。次の1年は、後輩の中からすこしずつ活躍の場を広げ始めたWhedarを誘い、共同出資で継続している。

 昨日のAさんの感想のとおり、ジョグジャのアーティスト達は自分の成功をちゃんと他者にも還元してるケースが多いのかもしれない。それはちょっと意地悪に見れば、他人のやっかみや恨み、嫉妬を避けるために、前もって還元してしまおうとしてるのかもしれないし、よく言えば「相互協力」「私のものはみんなのもの」という昔ながらのインドネシアのいい部分なのかもしれない。
 とはいえ、もちろんそんないい子ばかりじゃなく、作品が売れたお金でどんどん奥さんのおっぱいが整形ででっかくなってってるケースもなくはない。運転免許もってないくせに新車買っちゃってる子とか。奥さんが急に派手になって、お買い物は上海・・・なんていってる子とか。

 いやぁ~、今回久しぶりにAさんのおかげでしばらく会ってなかった旧友に会い、私自身も考えることが多かった。まさに中国のアートバブル。それでも彼らはすでにブームは冷めてきてるのを感じているという。こりゃ2~3年先が楽しみだ。ブーム前からコツコツやってた者と、ブームに乗った成り金アーティスト、どんなふうに差が出てくるか。ぜひぜひ見たいものだ。
by midoriart | 2010-02-02 22:33 | Art