Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

9月3日◇『Memory of Asia ~お爺ちゃんの時代~』

 バリ入りした8月31日から、ずっとウブドは雨が続いている。振り返れば20年近く作品を発表してきたけれど、個展で雨に降られるのは今回が初めてのような・・・。バリの家族の敷地内にある家族祠にも、日本の父の仏壇にも雨が降らないようにお願いしたけれど、朝からしとしと降る雨はすっきりあがることなく、オープニングの午後6時半を迎えた。


b0090333_16351825.jpg そうそう、その前に今日のサプライズ。開会前に最終で作品のチェックに出かけたとき、ギャラリーの前になにやら大きな花輪が立っている。インドネシアでは銀行のオープンとか、でかい商業画廊のオープニングにはたくさんの花輪が立つのだけれど、今まで私がこっちで個展をして、個人的に花をいただいたことはなかった。
「え?誰から?」
と思ってみれば、なんとデワ・ブジャナ! 少し前の記事にあるがデワ・ブジャナというのはインドネシアでも有数のバリ人ギタリストであり、活動15年のベテランバンドGIGIのギタリストとしても有名。彼と奥さんの連名でこの花輪が送られてきたのだった。素直に驚き、素直に嬉しい・・・。


b0090333_1636287.jpg 今回、バリ展の招待状兼ポスターには、バリで10数年来の付き合いになるフランス人の美術評論家、ジョン・クート氏に作品解説を書いてもらった。彼は私が一番最初にバリで展覧会をしたときにもテキストを書いてくれた、いわば私のインドネシア美術活動で一番古い友であり、私の作品の推移をすべて理解している人でもある。
 仰々しい開会式が嫌いな私は、ギャラリーオーナーのトニーさんに話して、こんな雨の中で足を運んでくださる方たちを待たせずに、来た人から展示室に入ってもらいたいことを伝え、しきたりぶった挨拶はなしにしたところにジョン・クート氏が来場。
「いや、ミドリの作品については、私から説明を入れたい」
との彼の希望で、ある程度の人数が展示室に集まったところで簡単な作品紹介と作家挨拶となった。


b0090333_1637278.jpg 昨日からバリを馬鹿にしたようなことばかり書いてて失礼ではあるけれど、インドネシアの中では片田舎にある地で、確かにこうした作品を理解してもらうのは難しい。ジャカルタやバンドンであったような反応はまったく期待してなかった。
 のだけれど。
 驚いたことに、来る人来る人が真剣に私の書いたテキストを読み、じっくりと作品を鑑賞してくれる。質問が出たりもする。こんな嬉しい事はない。


b0090333_16373637.jpg これがフィリピン編。1000人のフィリピン人と、私の1000個の陶作品を交換してもらったプロジェクト。


b0090333_1639243.jpg こちらはバリ編。私にとっては本当に第二の故郷と言えるバリ島で、100人のお爺ちゃん、お婆ちゃんと話し、作品を交換してもらったプロジェクト。これをバリで見せたいという思いから、今回の巡回展のアイデアが出たのだった。
 

b0090333_16392955.jpg 会場奥から入り口側を眺める。
 右手の壁に見えるのは東ジャワのブリタル編。


 今回バリで開催してみて気づいたのは、来場者がとても国際的なこと。それはバリ、それもウブドに近いという土地柄もあるし、トニーラカ・ギャラリーのリンクが外に向いていることもあるだろう。バリ在住の日本の友達がそれぞれに知り合いを誘って来場してくれたのも嬉しかった。
 友人の中にはバリ人と結婚し、バリと日本の血をもった子供がいる人もたくさんいる。今日はそんな子供が、自分の母の国の歴史を知り、興味深く1点1点を見てくれたことも印象的だった。またアメリカ人アーティストがコンセプトに感動してくれたり、見ず知らずの白人の老婆が本当にゆっくりと会場を見て回ってくれた姿もあった。

 あるインドネシア在住の日本人の知人が、来場者の対応で忙しい私のもとに来て、小さな声で言った。
「ミドリさん、この雨の中でね、一人だけ笑ってる人がいるよ」
「え?」
「ミドリさんのお爺様だよ、ここに写真のある・・・」
 そう、この交換プロジェクトはもともとお爺ちゃん子で、お爺ちゃんから昔の話を聞くことが大好きだった私が、身体に流れているお爺ちゃんの血を喜ばせるために、その昔は敵だった人の国で作品を交換するというプロジェクトを始めたもの。常に会場には軍服を着たお爺ちゃんの写真も展示している。展示で気が張っていて無事開会してほっとしているところに、お爺ちゃんが天国から笑って見ていてくれる姿が浮かんだら、突然涙が出てきて焦った。Mさん、化粧が剥げちゃうから泣かせるようなこと言わないでくださいよ~

 お爺ちゃん、4年かけて作ってきたものをたくさんの人に見てもらってます。
 見守ってくれて本当にありがとう。
by midoriart | 2009-09-03 16:33 | Art