Culture & Art Report from INDONESIA


by midoriart

8月31日~9月2日◇作品設置at TONYRAKA ART GALLERY

 今年4月からジャカルタ、バンドンを回った私の交換プロジェクト『Memory of ASIA ~お爺ちゃんたちの時代~』展が、インドネシアの最後の会場、バリのTONYRAKA ART GALLERYで始まる。
4日前にバリへ入り、作品のセッティングを始める予定にしていた。

b0090333_1621374.jpg 初日ギャラリーに行くと、まだ前の展覧会の作品を片付けているところだった。今までにこの会場は見ているけど、こうして作品がまったくない状態で見ると、相当に広い。およそ10x20メートルで、天井がとっても高い。後で知ったことだけど、ここはかつてバドミントン競技場として使われていたらしい。たしかに、よく見たら床にコートの跡っぽいラインが見える。


b0090333_163921.jpg バリといったら日本では有名だけど、インドネシアにいてバリというと実はただの田舎。というかインドネシア人にとってもバリってのは日常ではない楽園、リゾート地だから日本でいう沖縄のようなものかもしれない。
 現代美術に限って言えば、申し訳ないけれどまだまだ全然遅れている。私がバリに住んで最初に開いた展覧会では、インスタレーション作品の中にタバコの吸殻を入れられたことがあり、美術を見るマナーも何もあったもんじゃないことを痛感したものだった。だから今回のトニーラカ・ギャラリーは、実は私が一番恐れていた会場でもある。


b0090333_1635764.jpg 当然、ギャラリー側のスタッフに対しても期待はしていなかった。ジャカルタやバンドンで、大きな国際展を経験したきたような技術スタッフならまだしも、バリの田舎で基本的には絵画作品を壁に掛ける仕事しか知らないスタッフでは、私の作品設置はきっと理解ができないだろうと思っていた。
 ところが!トニーラカにいた二人の青年スタッフは、こっちのいうことをササッと理解し、手も早い。仕事も正確で丁寧ときたから本当に驚いた。バリ人にはまた失礼かもしれないが、思わず彼らの出身を聞いたくらいだ。一人は母親がスマトラ島出身ではあるにしろ、彼自身はバリ生まれのバリ育ち。もう一人は生粋のバリ人。さらに島外で仕事した経験もないという。なのにこの仕事!これは本当に驚きだった。


b0090333_1643545.jpg これが若くして有望なスタッフ、二人のコマン君。作品の大きさがバラバラだから、その中心を出して、センター合わせで横一列に並べていくという厄介な指示も、ちゃんと丁寧に迅速にこなす。


b0090333_165973.jpg オープニング2日前の夜。
 おおまかな壁面への作品設置が終わり、床に交換物を並べる段階になると、もう誰の手も借りられない。私一人でコツコツと500個以上の交換物を8x8センチの座布団に並べていく。本来は午後5時までの勤務なのに、8時を回ってもじっと私の横にいる一人のコマンに、
「ここからは一人でやってくしかないから、ほっといてくれていいよ」
と声をかけたら
「いえ、僕がアーティストのディスプレイに関してすべて責任をもっているので、最後まで付き添いますから。何かできることがあったら言って下さい」
ときた!
 バリで苦労したことのない人には、何をそんなことで感動してるんだ?と思われるだろうけれど、長くバリに暮らしてる人には、これがいかに貴重な存在であるか、おわかりいただけると思う。


b0090333_1654375.jpg 前日になって、一番気になっていた木枠が完成、私が撮影した100人のバリ人の顔写真をビニールシートに出力したものをその木枠に張り、メインの作品が完成。この大きな木枠7枚も、コマンはさっさとサイズを確認し、美しく会場のコーナーに取り付けてくれた。本当に手際がいい。要領よく動く人間の動きってのは見ててキレイだから、今回のセッティング3日間は本当に気持ちよく仕事ができた。


b0090333_166189.jpg 9月3日、明日のオープニングを前に、ようやく全体が完成。ドキュメンタリービデオを流す台も、機材も揃えてもらった。
今バリは火葬と婚礼シーズン。トニーラカ・ギャラリーのオーナー夫婦は、バリのカースト制でも上の階級で、お金も教養もあるという、バリではあまり数多くない層の人たち。でもそれをひけらかすでもなく、ちゃんと町内の奉仕活動にも参加している。町内の婚礼準備を1日手伝っていた夫妻が、帰宅の足でギャラリーに寄ってくれた。
「ミドリ!こういうのがやれて本当によかったよ。ずっと絵画作品ばかり見せてきて、ちょっと飽き飽きしていたんだよ」
とトニーさん。そして奥さんのラティは作品をじっくり見た後で
「感動したわ。お爺さんたちの反応に涙が出そうだったわ」
と言ってくれた。

 今回の作品シリーズは、私がどうしても多くの地で多くの人に見て欲しいと思って実現した。彼らのこういう言葉を聞いても、巡回させてよかったなーとつくづく思った。そしてようやく明日9月3日はオープニング。
by midoriart | 2009-08-31 15:59 | Art